令和5年度第4回eラーニング解答解説「咳、痰、呼吸困難」(発熱を伴う場合ものは『風邪様症状』で)
令和5年度第4回 「咳、痰、呼吸困難」(発熱を伴う場合ものは『風邪様症状』で)正答と解説
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解答解説-咳、痰、呼吸困難(発熱を伴う場合ものは『風邪様症状』で)
問1.【受診勧奨】医療機関への受診が必要かどうかを振り分ける。 〔答 すべて○(正答)〕
(1) ①肺炎のおそれ。その引き金になるのは風邪やインフルエンザと誤嚥。令和4年は「悪性新生物」、「心疾患」、「老衰」、「脳血管疾患」に次ぐ5番目の死因。発熱・全身倦怠感・食欲不振等の全身症状と咳・粘性膿性の痰(後に特異な錆色に)・胸痛・呼吸困難等の呼吸器症状がみられる。肺や気道に問題のある人は、異物を除去する機能が低下するので要注意。高齢者では、睡眠中のむせこみ等が見られない不顕性の誤嚥性肺炎がほとんどで、症状が軽いことがあり、見過ごされやすく死亡率も高いので問題にした。肺炎には抗菌薬による治療が必要。
②慢性閉塞性肺疾患(COPDCOPD)のおそれ。最大の原因は喫煙で喫煙者の1515~2020%が発症。長期の喫煙で気管支に炎症が起き、労作時の息切れ・慢性の咳や痰、一部の患者では喘息様症状を合併。次の不可逆的な肺の変化が進む。風邪やインフルエンザは増悪要因。
ⅰ)ビア樽状胸郭:気管支が細くなることによって空気の流れが低下して息を十分に吐き出せず、肺の過膨脹をきたす。
ⅱ)肺気腫:肺胞が壊れて大きな袋状になってガス交換の機能が低下する。
③心不全のおそれ。心機能が低下して左心室から血液が十分に排出されないと、肺からの血液の流入が滞り、肺は鬱血し、気管支にむくみが生じるため気道が狭くなり咳を起こしたり、息苦しくなったりする。横になると下半身の血液が戻りやすくなり、副交感神経優位では心機能も低下して誘因となる。医薬品の副作用でも起きる。
④肺血栓塞栓症のおそれ。入院中にベッドから動かなかったり、長時間座っていたりして、脚の筋肉を動かさない事で静脈内の血流が悪くなって血栓ができ、動き始めた時に右心室から肺に向かう肺動脈を閉塞する事がある。そうなると突然息苦しくなり、ときに息を吸う時に鋭く痛む。血中の酸素濃度が低下するので、それを補うために頻脈・頻呼吸になる。右心室が血液を送り出せず、右心不全を起こして失神・突然死することも。
⑤間質性肺炎のおそれ。肺胞の間質での炎症のため痰が出ない。徐々に間質が肥厚してガス交換が困難に。進行して肺線維症になると予後は深刻。原因は医薬品副作用、筋炎、強皮症、膠原病、アスベスト等で特定は難しい。副作用には細胞を直接傷害するものと免疫反応によるものがある(11~2 週間で発症)。
参考:肺癌は、早期にはほとんど症状が無く、定期的に検診を受けることが大切。肺疾患のうち、特に肺癌、肺膿瘍、肺線維症、気管支拡張症で、爪床の下の軟部組織が隆起して「ばち指」になることがある。
(2) ①気胸のおそれ。肺と胸郭の間には胸膜腔という隙間があるが、正常では少量の液体で満たされて容積変化がないため、肺は胸郭の呼吸運動に連動して換気できる。気胸では胸膜腔に空気が流入し、肺がしぼむと呼吸困難を起こす。最も多い自然気胸は、肺にできたブラ(のう胞)が破れて穴が開く。1010~30 代のやせ形の男性に好発、再発も多い。突然胸が痛み、ときに呼吸困難が起きる。子宮内膜症だと、肺に運ばれた子宮内膜細胞が生理の時に出血、肺に穴を開けることがある。空気が少量なら安静で改善するが、大量だとチューブで抜く必要がある。空気で心臓や肺が圧迫される緊張性気胸では死に至りうる。
②胃食道逆流症のおそれ。生理的現象でもある「一過性の下部食道括約筋圧の低下」が病的に頻発して胃食道逆流症症状が生じる。逆流が下部食道の迷走神経受容体を刺激し、中枢を介して反射性に起こる咳と、逆流内容が咽喉頭や下気道に到達し直接気道を刺激して起こる咳がある。また、咳自体も横隔膜圧を上昇させ逆流を招く。プロトンポンプ阻害薬が第1選択薬。肥満、喫煙、激しい運動、飲酒、カフェイン、チョコ等の食品も誘因に。
問2.【一般用医薬品でも対応できる咳、痰】〔答 ①C ②B ③A〕
①痰を伴う場合には、一般に鎮咳は望ましくない。去痰と抗炎症を目的に選択する。
②咳喘息では吸入ステロイド薬が第1 選択薬で、放置すれば喘息に移行しやすいので慎重な対処が必要。咳に対して気管支拡張薬、特に吸入β2 刺激薬が特異的に有効。喘息の発作時は喘鳴と呼吸困難を起こすが、咳喘息では慢性咳嗽が唯一の症状。就寝時~早朝に悪化しやすいが、昼間のみの人も存在し、季節性もある。痰はあっても通常は少量で非膿性。上気道炎、冷気、運動、たばこの煙、雨天、湿度の上昇、花粉や黄砂等が増悪因子。
よく似た症状を呈する「アトピー咳嗽」は、アトピー素因を背景に咽喉頭の掻痒感を伴う乾性咳嗽で、喘息には移行しない。エアコン、たばこの煙、会話、運動、精神的緊張などによって誘発されやすい。気管支拡張剤は無効で、抗ヒスタミン剤が有効だが程度によってステロイド剤が併用される。
③グアヤコールスルホン酸カリウムと麦門冬は気道を潤し、トラネキサム酸はノドの炎症に。カフェインなし。
問3 【鎮咳・去痰成分の特徴】
(1)〔答: ①A ②F ③D ④B ⑤E〕
(2 )〔答: ①D ②B ③C ④E ⑤A〕
(3) 〔答: ①A ②B ③D ④E ⑤C〕
問4【患者情報確認・生活スタイル】〔答: ①E ②B ③C ④G ⑤F ⑥A〕
①授乳婦に対する注意※:コデインは体内でモルヒネに変換されるが、その速度が特別に速い母親(日系人では1%1%)がコデインの服用後に授乳すると、母乳中のモルヒネ濃度が高まり、稀に乳児がモルヒネ中毒を起こす。
※:テオフィリン及びアミノフィリンは神経過敏、ジフェンヒドラミンは昏睡等を理由に記載。相談事項にはメチルエフェドリン、トリプロリジン、ペントキシベリン、クレマスチン又は無水カフェイン100mg 以上 回の製剤。
呼吸抑制関係は平成29 年7 月4 日の通知、12 歳未満の小児の服用禁止は令和元年7 月9 日の改訂指示による。
②心臓病・高血圧:交感神経刺激作用により心悸亢進、血圧上昇を起こすおそれがある。また、血管収縮作用により閉塞性血管障害が促進されるおそれもある。
甲状腺機能障害:亢進症では交感神経の感受性が高まっており、更に症状を悪化させるおそれがある。
糖尿病:肝臓のグリコーゲンの分解を促進し、血中グルコースを増加させるおそれがある。
③ジプロフィリンに記載されているが、テオフィリン、アミノフィリン水和物にも記載製品がある。医療用では、いずれの成分でも「慎重投与」。「甲状腺機能障害」については、機能亢進に伴う代謝亢進、カテコールアミンの作用を増強することがある。「てんかん」については、中枢刺激作用によって発作を起こすおそれがある。
参考:テオフィリン、アミノフィリンは、「発熱している小児」、「けいれんを起こしたことがある小児」は、痙攣を誘発するおそれがあることから、相談事項になっている。
④報告に基づく。医療用では類薬で心不全のある患者に悪影響を及ぼしたとの報告があるため「心障害のある患者」に対しても「肝障害のある患者」同様に慎重投与。一般用でも「心臓病」の記載が記載されている製品多数。
⑤1,5AG を含み、その血中濃度を高めるため。1日最大配合量がオンジとして1g以上又はセネガとして1.21.2g以上 エキス剤については原生薬に換算してオンジ1g又はセネガ1.21.2g以上 含有する製剤に記載されている。
参考:D ジメモルファンリン酸塩は、耐糖能に軽度の変化を来たすことがあるので、糖尿病の人には注意がいる。
問5.【アドバイス】〔答 ①× ②○ ③× ④○ ⑤×〕
①咳は1回で約2kcal 消費し、体力を消耗するので、「たん」の効能効果がある鎮咳去痰薬の利用も考える。
②誤嚥性肺炎の多くは、咽頭、副鼻腔、口腔の常在菌が原因で、脳卒中や寝たきりを背景に、免疫力・肺機能・体位変換能力の低下から、誤嚥により肺に増えて起こる。 嚥下と発声に使う筋肉は重なっているので発声したり、仰臥位で爪先を見るように頭を上げたりする訓練で必要な筋力強化になる。睡眠中の不顕性誤嚥は、上半身全体を少し上げた姿勢で眠ると防止効果がある。ACE 阻害薬やカプサイシンは嚥下反射を高めるとされる。
③肺炎球菌ワクチンを接種した方が肺炎による死亡率が下がるのは当然だが、ウイルスとの戦いで消耗した時に肺炎を起こしやすいため、インフルエンザワクチンの接種も推奨されている。
④その他として、ステロイドを使う人(喘息発作と誤認するなど)では、肺炎の誘発や悪化を招くことがある。
脾臓は肺炎球菌等の莢膜保有菌を排除するのに必要な臓器であるため、脾臓の摘出や放射線治療を受けた人は通常の肺炎のみならず急激かつ重篤な敗血症を起こす重症感染症の危険性が高くなる。
⑤精神的不安や極度の緊張により起きる過換気症候群の際の有名な対処法だが、意識的に呼吸を遅くしたり止めたりすることで改善するので、現在は行わない。過換気では血液中の炭酸ガス濃度が低下、呼吸中枢で呼吸が抑制されて息苦しくなる。血液が急激にアルカリ性に傾いて電解質バランスが崩れ、テタニーと呼ばれる手足の痺れや筋肉の痙攣、硬直が起きる。手先がすぼめた形になったり、顎関節部を叩くと口角あがったりする。