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令和6年度第1回eラーニング 解答解説「この症状、ストレスかも」

令和6年度第1回「この症状、ストレスかも」正答と解説

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「この症状、ストレスかも」確認テスト正答と解説

解答解説-この症状、ストレスかもがある

問1.【受診勧奨(病名を口にしない!)】〔答: すべて○ 〕
(1)① 頭蓋内の疾病が悪化しているおそれ。『国際頭痛分類 第3版日本語版』を「増悪」、「進行性」、「悪化」で検索⇒脳腫瘍、頭蓋内感染症(髄膜炎、脳炎、脳膿瘍)、頭蓋内真菌又は他の寄生虫感染、脳静脈血栓症、可逆性脳血管攣縮症候群(脳卒中に先立つ警告症状の場合もある)等。身体活動により増悪する頭痛もある(高血圧性脳症※、高血圧性緊急症、子癇、心筋虚血等。それ以外に特定の薬品や食品摂取後の身体活動で起こることも。)
※:軽度ないし中等度程度の高血圧では、血圧変動と頭痛の有無の間に明らかな関係は認められていない。
② 腎臓病のおそれ。腎機能が低下すると、血液中の老廃物や体内の余分な水分が排泄できなくなる。「むくみ」による循環血液量増加に伴って高血圧が起こったり、腎臓でのエリスロポエチンの分泌(赤血球の産生促進)が低下して「貧血」を起こしたりすることもある。タンパク(主にアルブミン)の漏出により、尿が泡立つことも。
急性腎炎は、連鎖球菌によるのどの痛みが起こった後、10日前後して小児に発病することが多い。
③ アジソン病のおそれ。感染症や自己免疫異常等により、副腎皮質に炎症が起こることで副腎皮質ホルモンが不足する病気。食欲不振、 悪心・嘔吐、下痢などの消化器症状、無気力、不安、うつなど様々な精神症状も訴える。
不足するホルモンを補充し、特にストレス時には増量しなければ、ショックを起こして死亡するおそれがある。
(2)①うつ病のおそれ。抑うつ状態に気付く前に、食欲がない、体がだるい、疲れやすい、性欲がない、頭痛や肩こり、動悸、胃の不快感、便秘がち、めまい、口が渇く、不眠などの肉体症状だけが現れることもある。脳内の神経伝達物質であるセロトニンとノルアドレナリンの不足を是正する抗うつ薬の他、症状に合せて補助的に抗不安薬なども使われる。ストレスで増加した血中コルチゾールが海馬神経を傷害する可能性が報告されている。
② 心的外傷後ストレス障害(PTSD)のおそれ。生死に関わるような体験をし、強い衝撃を受けた後で、その体験の記憶が当時の恐怖や無力感とともに、自分の意志とは無関係に思い出され、まだ被害が続いているような現実感を生じる。時間の経過とともに記憶が断片化し、全体を整理することができなくなるため、実際の記憶よりも怖く感じたり、必要以上に自分を責めたり、人間不信になったりすることがある。体験後1カ月経っても続いて生活の妨げになっている場合には、認知行動療法やSSRIなどの薬で治療することがすすめられる。
③ 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)のおそれ。身体的・認知的・精神的な負荷のあとに極端な症状の悪化が起こることが特徴で、通常、睡眠障害(過眠や不眠、熟眠感がないなど)および認知機能障害(記憶や集中力、思考力の低下)を伴う。脳画像研究により脳内炎症の証拠が示されており、主症状は脳機能の異常と考えられている。発熱や喉の痛み、嘔吐や下痢などの「風邪症状」を契機に突然発症することが多い。
④ 不眠症のおそれ。問題の症状は入眠障害。他に、夜中に何度も目覚める中途覚醒、早く目覚めて二度寝ができない早朝覚醒がある。日中に倦怠感、意欲低下、集中力低下、食欲低下などの不調が出現し、眠れないことへの不安や焦りから悪化する。睡眠時間によらず、昼間の生活に支障がなければ不眠症とは診断されない。原因はストレス、精神疾患、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群、アルコール、薬剤の副作用など多岐にわたる。
⑤ 甲状腺機能低下症のおそれ。全身の代謝維持に重要な甲状腺ホルモンが不足して活動性が鈍くなる。女性では生理不順(量が多い、期間が短いなど)も見られることがある。むくみやすくなるのは、ムコ多糖類が皮下にたまるため。眉毛の外側3分の1が抜けるのも特徴。甲状腺に慢性の炎症が起こる橋本病※が発症の主原因。
※:自己免疫疾患。多くは首の腫れから病気が見つかるが、ほとんどの患者は甲状腺ホルモンの分泌量に問題はない。
⑥ 粘血便は大腸ガンや潰瘍性大腸炎のおそれがある。潰瘍性大腸炎は、大腸粘膜に対する異常な免疫反応によりびらんや潰瘍を形成し、ひどくなると体重減少や貧血、発熱がみられる。治療しても再発する可能性がある。
問2.【セルフメディケーションでも対応できるストレス】〔答:①D,②E,③C,④B〕
適応障害の症状は、憂鬱な気分、不安感、頭痛、不眠など、人によって様々だが、仕事や学業、対人関係や社会生活を続けることに支障をきたす。ストレスの軽減で改善に向かうことが重要で、うつ病の場合には、環境が変わっても気分は晴れず、持続的に憂うつ気分は続き、何も楽しめなくなる。持続的な憂うつ気分、興味・関心の喪失や食欲の低下、不眠などが2週間以上続く場合は、うつ病かもしれない。
①は他にチョウトウコウ(カギカズラの部位)・ニンジン・セイヨウヤドリギ・コウブシなどを配合。
問3【医薬品の使い分け】(1)〔答:①C,②B,③④⑤D・E・F〕しばりに注意。
神経症:恐怖症、不安神経症、抑うつ神経症、強迫神経症、適応障害、ヒステリー、心気神経症、神経衰弱を含む
生姜瀉心湯:体力中等度で、みぞおちがつかえた感じがあり、はきけやげっぷを伴うものの次の諸症:食欲不振、胸やけ、はきけ、嘔吐、下痢、胃腸炎、口臭
(2)〔答:①B,②A,③E,④C,⑤D〕
①,②覚醒の仕組みは、ⅰ)モノアミン作動性神経系を主とする脳幹部の上行性網様体賦活系を介する経路と、ⅱ)視床下部後部から伸びている上行性のヒスタミン作動性神経系を介する経路があると考えられている。ⅰ)は外敵の多い環境で警戒し、生存能力を強化、ⅱ)は認識型の作業において、問題解決能力、学習能力、創造性を向上させる。
③日本では配合剤中のバレリアン(セイヨウカノコソウ)を、通常、カノコソウに代えて承認を取っている。カノコソウは日本薬局方に収載されている。
④「神昏」は、七竅(耳・口・目・鼻)が病邪によって閉塞され、意識が混迷してはっきりしない状態。開竅薬によって治療する。麝香や牛黄はその代表的な薬物。七竅は、五臓の精気の通り道と考えられている。
問4.【患者情報確認・生活スタイル】〔答:①C,②F,③E,④A,⑤G,⑥I,⑦J,⑧M,⑨K,⑩H〕
①睡眠改善薬以外のジフェンヒドラミン製剤では相談事項。妊娠中の睡眠障害は、ホルモンのバランスや体型の変化等が原因で「一時的な不眠」にあたらない。1日最大用量で比較すると睡眠改善薬は50㎎、鎮暈薬トラベルミン120㎎、アレルギー用薬レスタミン糖衣錠90㎎なので用量よりは使用目的の適正性が問題。ちなみに、医療用レスタミンコーワ錠の1日最大用量は150㎎で、添付文書には、抗ヒスタミン剤を投与された患者群で、奇形を有する児の出生率が高いことを疑わせる疫学調査の報告があるため「投与しないことが望ましい」とある。
③一般用では鎮静が目的。医療用では高齢者、虚弱者、小児、呼吸機能の低下している患者に対する注意有り。
④,⑤難波恒雄著『原色和漢薬図鑑(下)』には、「妊婦に服用さすと堕胎のおそれがあるので禁忌である。麝香と牛黄の効用はよく似てはいるが異なっている。牛黄はその薬性涼で、熱を清し、竅きょうを開き、毒を解し、痰を豁やぶる。麝香じゃこうはその薬性温で、穢を辟け、竅を開き、血を活し、腫を消し、経を通じ、痛みを止める。臨床応用上、以上の区別をよく認識して用うべきである。」とある。
⑦,⑧グルコースとよく似た構造を持つ1,5アンヒドロ-D-グルシトール(AG)の血中濃度は、血糖値が上がるとグルコースと一緒に排泄されて低くなり、血糖値が下がると高まる。遠志は1,5-AGを含み、その血中濃度を高めるため、糖尿病検査1,5-AG検査において、誤診(短期間における改善)を招くおそれがある。
問5.【アドバイス】〔答:①×,②○,③×,④○,⑤○〕
①30分程度無理なく続けられる有酸素運動が効果的。運動強度60%=〔{(220-年齢)-安静時心拍数}× 0.6+安静時心拍数〕の心拍数となる運動を20分以上することで、脳波のα波が増加してリラクセーション効果が得られる。脳内麻薬β-エンドルフィンが増加することも誘因の一つと考えられている。運動強度は50%でもOK。
②他のことを考えるようにすることが大事で、小説を読んだり、パズルをしたりする足がかりにもできる。
③自発的な優しさは、全ての当事者が満足できる解決策となって、絶望感や消極的な態度を減らすことができる。
④起床後に朝日の強い光を浴びることで体内時計はリセットされ、夜間のメラトニン分泌量が増加、睡眠・覚醒リズムが整い、速やかな入眠につながる。LEDが使用されている照明器具やスマートフォンの光には、体内時計への影響が強い短波長光(ブルーライト)が多く含まれているので、就寝前の使用は避けたい。
⑤連用中の投与量の急激な減少ないし投与の中止により、痙攣発作、せん妄、振戦、不安等の禁断症状があらわれることがある。製造販売業者の話を総合すると「長期連用」とは「2週間」と考えておけばよい。