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令和6年度第3回eラーニング 解答解説「熱だ、風邪かも」

令和6年度第3回「熱だ、風邪かも」正答と解説


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「熱だ、風邪かも」確認テスト正答と解説

解答解説-熱だ、風邪かも

問1.【受診勧奨】医療機関への受診が必要かどうかを振り分ける。〔答:すべて○〕
(1)①重症多形滲出性紅斑(SJS やTEN 等)のおそれ。多くは原因医薬品服用後2 週間以内にHLA などの遺伝的背景のある人が発症し、急激に悪化。皮膚の水疱はすぐに破れてびらんになり、尿道、肛門、上気道、消化管等の粘膜も侵されうる。眼は後遺症が残ることがある。敗血症、多臓器不全等により死亡する場合も。
②急性喉頭蓋炎のおそれ。気道閉塞をおこしうる感染症のひとつで,経過が早く死に至ることもある。症状が進むとよだれ、頻呼吸、吸気性喘音がみられ、臥位を取ると腫大した喉頭蓋が気道を塞ぐため坐位をとろうとする。
③間質性肺炎のおそれ。痰が出ないのは肺胞の間質で炎症が起こるためで、徐々に間質が肥厚(線維化)してガス交換が困難になる。ときに「ばち指」になることがある。原因は特定できない場合が多いが、医薬品の副作用、膠原病、アスベストなど多様。
④肺炎のおそれ。風邪をひいて障害された気管支や肺に細菌が落下・付着して起こる。日本では4~5番目の死因。肺炎で死亡する人のほとんどは65 歳以上の高齢者で、食欲がない、元気がない、反応が鈍い等が前面に現れ、見落とされやすい。インフルエンザや肺炎球菌のワクチン接種が予防に繋がる。口腔内容物の誤嚥も原因。
⑤髄膜炎のおそれ。嘔吐することもある。細菌性髄膜炎は上気道あるいは呼吸器感染病巣から血行性に髄膜に到達、致死率は高く後遺症を残すことも。無菌性髄膜炎は多くがウイルス性、入院・対症療法だが経過は通常良好。
⑥虫垂炎のおそれ。吐き気は数時間でおさまる。痛みはへその周りや上腹部で始まることが多く、24 時間以内に右下腹部に移動、その部分を押して離した時に痛み強まる。解熱鎮痛薬で楽になる生理痛以外の腹痛は要注意。
⑦下記疾病のおそれ。小児に発熱と発疹がみられたら、学校感染症の指定、病歴把握の観点から受診が望ましい。
・川崎病は、主に4歳以下の小児に発熱と発疹が生じ、口唇の紅潮と苺舌、両眼球結膜の充血、頚部リンパ節腫脹等を伴う。冠動脈瘤ができると、狭心症や心筋梗塞のリスクが高まり、手術や永続的な管理が必要になる。
・風疹(3 日ばしか)はウイルス感染症で、潜伏期間は14~21 日。発疹、耳介後部のリンパ節腫脹が出現する。麻疹より軽症で、発熱は約半数にみられる。妊娠20 週頃までの初感染による先天性風疹症候群(心疾患、難聴、白内障、色素性網膜症等)を防ぐにはワクチン接種が重要。
・水痘(水疱瘡)はウイルス感染症で、潜伏期間は2 週間程。成人は発熱と全身倦怠感で始まることがあるが、小児は最初に掻痒を伴う発疹が頭皮→体幹・四肢ときに粘膜に出現。紅斑、丘疹を経て短時間で水疱となり、痂皮化する。倦怠感、掻痒感、38 度前後の発熱が2~3 日間続く。
・猩紅熱は特殊なA群溶連菌感染症で、発疹は毒素による。
(2)①下記2 疾病のおそれ。二重に感染している場合もあるようである。細菌性咽頭炎では咳(-)、鼻炎(-)。

②麻疹(はしか)のおそれ。空気感染もするウイルス感染症で、潜伏期間10~12 日。発熱が2~4 日間続いた後に頬粘膜にコプリック斑が出現。発疹(耳後部、頚部、前額部→顔面、体幹部、
上腕、四肢末端)ともに再び3~4 日間高熱。合併症による二大死因は肺炎と脳炎。
③肺結核のおそれ。進行すると、だるさ、血痰などが出始める。2022 年は10,235 人の新患者が発生、死亡者は1,664 人。空気感染するが、菌を吸い込んでも感染するとは限らず、感染しても発病するとは限らない。そして、発病しても菌を体外に排出(排菌)しなければ、他人にうつすこともない。薬物治療が可能。
④全身性エリテマトーデス(SLE)のおそれ。女性に多く、抗核抗体の免疫複合体ができて炎症が起こる。ディスク状のディスコイド疹も顔面、耳介、頭部、関節背面に好発。肘、膝等の大きな関節に移動性の関節炎も。
⑤COVID-19 の罹患後症状のおそれ。疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下等が2ヵ月以上持続していたら、まず受診。個人の状況により、労災保険、傷病手当金、障害年金等、社会保障制度もある。

問2.【一般用医薬品でも対応できるかぜの症状】〔答: ①A,②D,③F,④B,⑤H,⑥K〕
インフルエンザの場合、潜伏期間1~3 日後、38℃以上の熱、頭痛、関節痛、筋肉痛等全身症状が突然現れる。治療薬もあるので受診勧奨。レジオネラは、他の細菌性肺炎と同様の症状を呈すが、傾眠、昏睡、幻覚、四肢の振せんなどの中枢神経系の症状や下痢は特徴。循環式浴槽、冷却塔、給湯設備などの中でアメーバを宿主として増殖、そこで発生するエアロゾルを吸い込むことで感染するが、ヒトからヒトに直接感染することはない。単純ヘルペスウイルス1 型による歯肉口内炎は歯齦・舌に、手足口病は口腔内前方及び手や足に水疱疹が現れる。

問3.【かぜに用いる医薬品の主作用の特徴】(1)〔答: ①A,②C,③B,④E〕
アンブロキソールはブロムヘキシンの活性代謝物で、副鼻腔粘膜細胞にも作用し、病的副鼻腔粘液分泌正常化作用及び線毛運動亢進作用により慢性副鼻腔炎の排膿を促進する。アセトアミノフェンの作用発現は早いが、抗炎症作用は弱い。作用の正確な部位や機序は完全には解明されていないが、作用機序としては、中枢神経系に作用し、プロスタグランジン合成、カンナビノイド受容体系又はセロトニン作動系などに影響を及ぼすと考えられている。

(2) 〔答:①B,②A,③C,④F,⑤D,⑥E〕
表証※のある初期には、体を温めて発汗させる。ただし、闘病反応が低下して、顔色悪く、芯から冷えている(脈が沈遅、小便は無色・澄明)では、症状がはっきりしなくても軽症とは限らず、麻黄附子細辛湯、真武湯、四逆湯等の附子剤を要する場合がある。また、初期から熱感のみが現れる温病では、銀翹散が適応する。

問4【患者情報確認・生活スタイル】〔答:①A,②E,③F,④G,⑤H,⑥C〕
①マオウ配合のかぜ薬や鎮咳去痰薬にはアドレナリン作動成分と同様の注意が入るが、「糖尿病」の代わりに「腎臓病」。
③サリチル酸系であるため、ライ症候群との関係で記載されている。体内でサリチル酸にならないため、アスピリン等とは扱いが異なる。医療用エテンザミドの添付文書では、15 歳未満の水痘、インフルエンザの患者には原則として投与しない旨「重要な基本的注意」に記載されている。やむをえず使用する場合には十分な観察が必要。
④平成 24 年 4 月 24 日、イブプロフェン製剤に対して、胎児の動脈管収縮作用を踏まえ改訂指示が出された。
⑤平成23 年10 月14 日、『一般用医薬品の使用上の注意記載要領』見直しに伴って、コデインリン酸塩水和物又はジヒドロコデインリン酸塩を含有する製剤にも記載されることになった。
⑥肝機能障害のある患者は肝機能が悪化、類薬で心不全のある患者に悪影響を及ぼしたとの報告がある。アスピリン、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン又はエテンザミドの製剤には「高血圧、腎臓病」が、イブプロフェン製剤にはさらに「全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病」が加わる。

問5【アドバイス】〔答:①× ②○ ③× ④× ⑤×〕
①エンベロープ(宿主の細胞の脂質膜)を持つウイルスなので、アルコールや石鹸により感染力を失う。
②かぜ薬に記載されている“長期連用”とは、5~6 回の服用で効果があったことを前提に、各社目安として5日~1 週間の幅で案内している。(イブプロフェン製剤は「5 日間を超えて服用しないでください」)
③咳やくしゃみの飛沫は最長で約2メートル飛ぶと言われている。急な咳・くしゃみには咳エチケットも忘れず。
④「風邪」「ウイルス対策」とあるのは飛沫の捕集性能を示すに過ぎない。また、フィルターのろ過性能が高くても顔との隙間が大きければ意味がない。だが、高ろ過性能で隙間がなければ、行動は制限される(中国ではN95 マスク※をして走った生徒が死亡)。行動様式とのバランスが重要。 ※0.3 ㎛以上の粒子を95%捕集できる
⑤1~2 日間短縮。抗ウイルス薬を必ず使った方が良いということではないが、選択肢としてお知らせしておく。