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令和4年度第3回eラーニング 解答解説「倦怠感、疲労、栄養不足による諸症状」

令和4年度第3回 「倦怠感、疲労、栄養不足による諸症状」 確認テスト正答と解説

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「倦怠感、疲労、栄養不足による諸症状」確認テスト正答と解説

解答解説-倦怠感、疲労、栄養不足による諸症状

問1.【受診勧奨】医療機関への受診が必要かどうかを振り分ける。〔答:すべて正答〕
(1)①腎臓病のおそれ。腎機能が低下すると、血液中の老廃物や体内の余分な水分が排泄できなくなる。「むくみ」による循環血液量増加に伴って高血圧が起こったり、腎臓でのエリスロポエチンの分泌(赤血球の産生促進)が低下して「貧血」を起こしたりすることもある。尿の泡立ちはタンパク(主にアルブミン)の漏出による。急性腎炎は、連鎖球菌によりのどの痛みが起こった後10 日前後して小児に発病することが多い。
②うっ血性心不全のおそれ。心機能が低下して左心室から血液が十分に排出されないと、肺からの血液の流入が滞り、肺が鬱血して気管支にむくみが生じる。そのため気道が狭くなり咳を起こしたり、息苦しくなったりする。横になると下半身の血液が心臓に戻りやすくなり悪化し、起きていた方が楽になる。医薬品の副作用でも起きる。
③アジソン病のおそれ。感染症や自己免疫異常等により、副腎皮質に炎症が起こることで副腎皮質ホルモンが不足する病気。食欲不振、 悪心・嘔吐、下痢などの消化器症状、無気力、不安、うつなど様々な精神症状も訴える。不足するホルモンを補充し、特にストレス時には増量しなければ、ショックを起こして死亡するおそれがある。
④急性肝炎のおそれ。主に肝炎ウイルスの感染が原因でおきる急性の肝機能障害を呈する病気。A,E 型は経口感染、B,C,D 型は血液又は体液を介して感染する。潜伏期は通常3~8 週間だが、B,C 型では6 ヶ月間に及ぶ場合がる。感冒様症状に続いて現れる黄疸は肝障害が生じていることを示す。食欲不振、全身倦怠感、嘔気、嘔吐などの症状も同じ時期に現れる。尿の色の変化は黄疸の数日前から現れ、黄疸の進行とともに黒っぽく変化する。

(2)①慢性疲労症候群のおそれ。死亡することはないが、治りにくいことが多い。疲労状態が6 か月以上続く、ないしは再発を繰り返す。その他、頭痛、のどの痛み、筋肉痛、関節痛、腹痛、睡眠障害、思考力・集中力の低下、微熱、筋力低下、首のリンパ節の腫れ等、症状は多様。うつ病では一般に朝に症状が重く、午後に軽くなる。
②睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害など、睡眠時に本人が気付かない疾病のおそれ。・睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に繰り返し呼吸が止まり、そのたびに脳が覚醒して熟睡できない。顎が小さ
い、ノド周辺の脂肪が多い等から上気道が狭まりイビキをかく。更に重力で舌根が落ち込んで上気道が塞がると、呼吸が止まる。通常なら酸素吸入を必要とするほどの低酸素血症を生じ、心拍数や血圧が上昇、心疾患や脳卒中を起こす蓋然性も高まる。まず飲酒や睡眠薬使用の制限、鼻疾患の治療、肥満者には減量を指導し、必要なら気道に陽圧を持続的にかける「持続陽圧呼吸(CPAPシーパップ)」や下あごを少し前に出す「マウスピース」を使う。
・周期性四肢運動障害では、睡眠中に20〜60 秒間隔で繰り返しピクンと動く足首や母指の背屈、膝関節の屈曲のために、入眠困難や中途覚醒が生じる。
③うつ病のおそれ。食欲がない、体がだるい、疲れやすい、性欲がない、頭痛や肩こり、動悸、胃の不快感、便通異常、めまい、口が渇く、不眠などの身体的な不調だけが現れることもある。大切な人や物を失う、人間関係のトラブル、職場や家庭での役割の変化などが要因となる。発症メカニズムには、脳内の神経伝達物質であるセロトニンとノルアドレナリンの不足、ストレスホルモンでもある血中コルチゾールの増加による海馬の萎縮、脳内の免疫担当細胞であるミクログリアの活性化による炎症性サイトカインの発現など諸説ある。
④甲状腺機能低下症のおそれ。全身の代謝維持に重要な甲状腺ホルモンが不足して活動性が鈍くなる。女性では生理不順(量が多い、期間が短いなど)も見られることがある。むくみやすくなるのは、ムコ多糖類が皮下にたまるため。眉毛の外側3 分の1 が抜けるのも特徴。甲状腺に慢性の炎症が起こる橋本病※が発症の主原因。※:自己免疫疾患。多くは首の腫れから病気が見つかるが、ほとんどの患者は甲状腺ホルモンの分泌量に問題はない。
⑤貧血症状。血液中のヘモグロビン値が男性で13.0g/dl、女性で12.0g/dl 以下が「貧血」。血液の酸素を運搬する能力が低下して症状が現れるが、慣れや代償機能により気付きにくい。中高年では、胃腸の潰瘍やガン、子宮の筋腫やガン等が失血の原因に。白血病、多発性骨髄腫、肝臓病、腎臓病、関節リウマチ等の膠原病及び感染症、アルコールの多飲や消化器の不調による栄養欠乏等によって正常に血液が作られにくくなったり壊されたりして起こることもある。心臓病や肺の病気でも同様の症状が顕れる。なお、「立ち眩み」は貧血とは直接関連ない。

問2.【一般用医薬品でも対応できる倦怠感、疲労、栄養不足による諸症状】〔答: ①E,②A,③B,④D,⑤C〕

問3.【一般用医薬品の使い分け】
(1)〔答: ①F,②G,③E,④A,⑤C〕
肝臓水解物:肝組織呼吸の促進、肝臓蛋白合成能の促進、肝血流量の増加などの作用をもつ。ビタミンB2:炭水化物、資質の代謝に補酵素として働く。欠乏すると口内炎や角膜炎になる。
(2)〔答: ①G,②E,③F,④D,⑤C〕
帰脾湯=体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪いものの次の諸症:貧血、不眠症、神経症、精神不安真武湯=体力虚弱で、冷えがあって、疲労倦怠感があり、ときに下痢、腹痛、めまいがあるものの次の諸症:下痢、急・慢性胃腸炎、胃腸虚弱、めまい、動悸、感冒、むくみ、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ

問4.【患者情報確認・生活スタイル】〔答:①A,②J,③F,④K,⑤G,⑥D,⑦M〕
①妊娠3 ヵ月前から妊娠3 ヵ月までの間にビタミンA を1 日10,000I.U.(国際単位)※以上摂取した妊婦から生まれた児に先天異常の割合が上昇したとの報告があり、医療用では、5,000IU/日以上の投与は禁忌。※:1IU=0.33μgRAE(レチノール活性等量)。「令和元年国民健康・栄養調査」では、20 歳以上の平均摂取量は547μgRAE。「日本人の食事摂取基準2020 年版」では、18 歳以上の成人男性の推定平均必要量は600~650μgRAE/日、女性は450~500μgRAE/日。妊娠中の付加量(推定平均必要量)は初期並びに中期はゼロ、後期は60μgRAE/日。後期の推奨量の付加量は、丸め処理を行って80μgRAE/日とされている。耐容上限量は2,700μgRAE/日。
②血行促進作用があるため。服薬後は自動車の運転不可。ツムラの薬養酒(ツムラ)、ブドウ酒(中北薬品)、薬用養命酒(養命酒製造)、黄帝酒(佐藤製薬)等がある。
③下垂体や副腎系に作用してホルモン分泌に影響を与えるためで、一時的な現象であるが、出血が長く続く場合は、他の原因による不正出血も考えられる。
⑤選択肢中、ビタミンEと鉄については一般に「便秘、下痢」となっており、「便秘」がもっぱら知られているのはカルシウムだけ。制酸薬において、カルシウム塩やアルミニウム塩は、Ph を高める効果は高くはないが持続性があり、マグネシウムの瀉下作用を打ち消す意味でも配合される。
⑥酸化還元反応を利用した検査に対して、強い還元作用が影響を及ぼす。医療用添付文書に次のようにある。ⅰ)各種の尿糖検査で尿糖の検出を妨害(偽陰性)しうる、ⅱ)各種の尿・便潜血反応検査で、偽陰性を呈しうる
⑦「胃腸の弱い人」も要注意だが、そう記載があっても「食欲不振」に対する効能・効果のある処方(例:十全大補湯や人参養栄湯)もある。他の配合生薬とのバランスにもよるので、処方意図をよく理解する必要がある。

問5.【アドバイス】〔①○,②○,③×,④×〕
②耐容上限量は2,500mg。「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015 年版」では、骨粗鬆症の治療のためには1日700~800mg の摂取を推奨しているが、「令和元年国民健康・栄養調査」での実際の平均摂取量は以下のとおり。

③ビタミンDは魚やきのこに多く含まれているが、摂取量の日間変動が大きく実態調査が難しい上、皮膚での産生量も緯度や季節によって紫外線の照射量が大きく異なるため、摂取の必要量は一概に言えない難しさがある。「日本人の食事摂取基準2020 年版」では、健康な成人を対象とした4季節4日間にわたる食事記録の中央値を単純平均し、これを丸めて8.5μg/日(妊婦・授乳婦も)を摂取目安量とた。ちなみに令和元年国民健康・栄養調査の成人平均摂取量は7.2μg。60 歳以上が平均値を押し上げており、妊婦・授乳婦はともに4.0μg であった。
④ビタミンEではなく葉酸。「日本人の食事摂取基準2020 年版」では成人(18 歳~)は男女差なく240μg、妊婦は貧血予防のため更に240μg、授乳婦は100μg、神経管閉鎖障害予防の当該時期は400μg が付加量として推奨されている※。ちなみに葉酸は緑黄色野菜や果物等に多く含まれ、健康日本21 の野菜350g/日等、適正な食事であれば、400μg/日の摂取は可能と考えられるが、「令和元年国民健康・栄養調査」での女性の平均摂取量は20代226μg、30 代233μg、妊婦・授乳婦はそれぞれ243μg・220μg であることから、ビタミン剤の利用も必要。