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令和6年度第2回eラーニング 解答解説「皮膚の痒み、肌荒れ」

令和6年度第2回「皮膚の痒み、肌荒れ」正答と解説

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「皮膚の痒み、肌荒れ」確認テスト正答と解説

解答解説-皮膚の痒み、肌荒れ

問1.【受診勧奨】医療機関への受診が必要かどうかを振り分ける。 〔答:(1),(2) すべて ○〕
(1)痒みの原因が問題の病気や異常による場合には、抗ヒスタミン剤では効果が得られない。
①黄疸の症状。ヘモグロビン分解物のビリルビンが胆汁として排泄できずに血中に溜って起こる。肝細胞性黄疸、閉塞性黄疸、溶血性黄疸があり、肝障害、胆管の閉塞を起こす疾患、溶血性貧血など重大な疾病が隠れている。
②腎不全で尿毒症を起こしているおそれがある。味覚異常、金属様の味、動悸、咳、息苦しさなどもみられる。
(2)①下肢静脈瘤による鬱滞性皮膚炎のおそれ。皮膚への酸素や栄養の供給が不足し、酷くなると潰瘍を生じる。
②帯状疱疹のおそれ。脊髄後根神経節あるいは三叉神経節の神経節に潜伏した水痘・帯状疱疹ウイルスが免疫低下時等に再活性化し、感染した神経線維が支配する領域の皮膚に、紅斑と小水疱が帯状にかたまって生じる。水疱から水痘を他人にうつしうる。顔面に症状が出た場合は角膜や結膜の炎症、耳鳴りや難聴、顔面神経麻痺が残ることがある。皮膚病変の出現後72 時間以内に抗ウイルス薬を使用することが推奨される。
③扁平苔癬のおそれ。四肢の関節部、陰部などに好発。「網状」と表現される口中の発疹がみられることがある。
④尋常性乾癬のおそれ。原因はっきりしないが、食事の西洋化が関係していると類推されている。にきびのような赤い発疹で始まり、ある時を境に消失するというのを繰り返す。爪に症状が出ると爪水虫に似て白く厚くなる。
⑤アトピー性皮膚炎のおそれ。角層内の保湿因子や細胞間物質(セラミドなど)の異常などにより皮膚のバリア機能が損なわれ、乾燥、汗や衣類などの刺激で炎症を起こしやすい状態の人が、ダニや食べ物などの成分に対するIgE抗体がつくられて皮膚にアレルギー性の炎症を起こす。成人は精神的ストレスが増悪要因になる。
⑥角化型疥癬のおそれ。ヒゼンダニ(全長0.4 ㎜)が角質層に寄生。角化型ではイベルメクチンの内服が必要。高齢者施設等で集団発生が増加。通常疥癬では疥癬トンネルと呼ばれる曲がりくねった線状疹と夜間に激しくなる痒みが特徴で、イオウ・サリチル酸・チアントール軟膏(第2類)で済むこともある。
⑦マダニに吸血されているおそれ。無理に除去すると一部が皮膚内に残り化膿したり、マダニの体液が逆流する。マダニを介したウイルス感染症=重症熱性血小板減少症候群の報告がある。6 日~2 週間後に発熱と消化器症状が出たら受診。致死率は6.3〜30%。
⑧ボーエン病も考えられる。有棘層の細胞が癌化したものだが真皮に及んでいない状態。有棘細胞癌とは異なるが、放っておくと真皮に侵入して有棘細胞癌と同じ状態になる。

問2.【一般用医薬品でも対応できる皮膚の痒み、肌荒れ】〔答: ①C,②G,③A,④E,⑤B,⑥D,⑦F〕
①外用剤の使用個所に紫外線があたると、重症の接触皮膚炎を起こすこと(光線過敏症)が知られた成分にケトプロフェン等がある。数か月遡って使用歴がある場合には受診勧奨。軽い痒みと黄白色の鱗屑がついた紅斑が特徴の脂漏性皮膚炎は、皮脂を好む常在真菌マラセチアが主な原因と考えられ、ミコナゾールシャンプー等で除菌。
②炎症が強いものには抗ヒスタミン成分を含むステロイド剤を塗布し、冷湿布。ハチは受診勧奨が無難で、30分程の間に、かゆみが広がる、呼吸がおかしい(喘鳴)、冷や汗が出る等ショックの兆候が現れたら救急車。保育・幼稚園や小学校で集団発生するシラミはアタマジラミで、皮膚から吸血して、かゆみ、湿疹などを起こす。
⑥溶連菌による痂皮性膿痂疹の場合は瘡蓋(かさぶた)が厚く、急性腎炎の原因にもなるので、1 か月程は尿量減少等に注意。

問3.【一般用医薬品の使い分け】
(1) 〔答: ①E,②A,③B,④D,⑤C〕

②≪Medium≫のステロイド性抗炎症成分。吸収しやすい皮膚の小児や高齢者向き。細胞膜のリン脂質からアラキドン酸を切り出す酵素、「ホスホリパーゼA2」を阻害する蛋白の合成を促進し、炎症の始まりの段階で抑制する。
③ウフェナマートは、フルフェナム酸をエステル化して局所刺激作用を減弱させ、皮膚外用剤として開発された。膜安定化及び活性酸素生成抑制作用など、生体膜との相互作用により消炎作用を示す。
⑤アゼラスチン塩酸塩の血中濃度は、OTC 用量の1 ㎎単回投与の場合、非常になだらかに減少し、T1/2=約23 時間(3mg⇒16.5 時間)。

(2)〔答: ①B,②H,③E,④C,⑤F〕
A.温経湯:体力中等度以下で、手足がほてり、唇がかわくものの次の諸症:月経不順、月経困難、こしけ(おりもの)、更年期障害、不眠、神経症、湿疹・皮膚炎、足腰の冷え、しもやけ、手あれ(手の湿疹・皮膚炎)
D.桂枝茯苓丸料加薏苡仁:比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴えるものの次の諸症:にきび、しみ、手足のあれ(手足の湿疹・皮膚炎)、月経不順、血の道症
G.白虎湯 :体力中等度以上で、熱感、口渇があるものの次の諸症:のどの渇き、ほてり、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ

(↑有効性について:右の2製剤は「やや有効」以上、左の2製剤は不明)

 

問4【患者情報確認・生活スタイル】〔答:①B,②C,③F,④D,⑤E,⑥A,⑦G〕
免疫抑制作用により、感染症を誘発したり増悪したりするおそれがある。免疫力は糖尿病によっても低下する。広範囲の使用が長期に続くと、後嚢白内障、緑内障等の眼疾患、皮膚の感染症、ステロイドざ瘡、ステロイド皮膚(皮膚萎縮、毛細血管拡張)、魚鱗癬(ぎょりんせん)様皮膚変化、紫斑、多毛及び色素脱失等の皮膚症状、下垂体・副腎皮質系機能の抑制等が起こるおそれがある。また、動物実験で催奇形作用が報告されているため、医療用医薬品の添付文書では、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に対して「大量又は長期にわたる広範囲の使用を避けること」とある。一般用に妊婦等に対する注意の記載がないのは、長期連用しないことになっているからである。
②,③出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑病など)の人は使用できない。
④角質溶解剥離作用が強く出やすいので、尿素の配合量が10%を超える製剤は、「小児の乾燥性皮膚」や「手足のかさつき」等の小児が対象となりうる効能・効果をとることができないことにもなっている。ヘパリン類似物質も血行促進・抗炎症作用の他に保湿作用があるが、小児に対する注意は特にない。
⑤アンモニア水は、「虫さされ」、「かゆみ」の効能・効果が取られている他、「打撲」、「捻挫」、「肩こり」、「腰痛」、などの効能・効果を併せ持つ製剤にも配合されている。アンモニアガスの吸収により、鼻粘膜の知覚神経を刺激し、反射的に中枢興奮を呼び、血圧上昇、呼吸亢進をきたすことがあるので、「気付け」の効能・効果を併せ持つ製品もある。強い局所刺激作用を有するので、乳幼児や皮膚の特に弱い人、顔や頭皮に使用する人には別の薬を勧めたい。患部に軽く塗るだけにとどめ、ガーゼ、脱脂綿などに浸して患者に貼付しないこと。アンモニア水は、10w/v%前後の濃度でも短時間の皮膚接触で灼熱感や発赤をきたし、長時間にわたると局所の壊死を招く。定められた用法を守ることが大切である。
⑦アゼラスチン塩酸塩は中枢神経系の抑制作用は弱いものの「眠気」等の報告があり、動物実験では乳汁中に移行する。ラットで大量投与による催奇形作用の報告があり、妊娠中は使用できない。

問5.【アドバイス】①○ ②○ ③× ④× ⑤○
③角質溶解剥離作用は、高濃度の方が効果があり、皮膚の軟化を主目的に、例えば硬くなった足のかかとなどに使用する場合には20%の方をおすすめするが、保湿作用は各濃度間で大きなはないと言われており、乾燥肌では、刺激に弱くなっていることから、むしろ低濃度か、無配合のものを選んだ方が良い場合も多い。
④ハチ毒は、結合組織破壊、血圧降下、細胞膜透過性亢進、痛み、平滑筋収縮などを起こす複合タンパクで、問4⑤の説明にあるとおり、アンモニアで中和できるものではない。