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【登録販売者のまめ知識】今日からできる!市販薬オーバードーズ対策と販売者の声かけ術」

登録販売者まめ知識  

市販薬のオーバードーズ(過量服薬)は、ここ数年で社会問題として大きく取り上げられるようになりました。特に若年層での増加が顕著で、救急搬送の事例も後を絶ちません。内閣府や厚生労働省の最新資料でも、市販薬を用いた過量服薬や濫用の実態が詳細に示されており、販売現場の対応強化は急務となっています。
本記事では、登録販売者が現場で「今日からできる対応」を中心に、最新の知見を踏まえて解説します。

オーバードーズとは — まずは基本を押さえよう

「オーバードーズ(Overdose、OD)」とは、本来定められた用法・用量を守らずに医薬品を過剰に服用すること、あるいは医療目的ではない「快感」「気持ちよさ」「現実逃避」を目的として大量に飲む行為を指します。

特に、ドラッグストアや薬局で一般用医薬品として手に入る「かぜ薬」「咳止め薬」「総合感冒薬」「解熱鎮痛薬」などが乱用対象になりやすく、身近な市販薬だからこそ「安全」「 harmless(害はない)」と思われがちですが、それは大きな誤りです。

用法・用量を守らずに使用すれば、意識障害、吐き気・嘔吐、不整脈、肝障害、中枢神経への影響など、深刻な健康被害や最悪の場合は命にかかわる危険があります。

市販薬でなぜ過量服薬が起きるのか

なぜ処方薬ではなく、市販薬でオーバードーズが増えているのか。主な理由として次のような点が挙げられます。

  • 購入しやすさ:ドラッグストアや薬局で気軽に買えるため、敷居が低い。しかも第2類・第3類医薬品の多くは、薬剤師だけでなく登録販売者でも販売できる。

  • 安易な手段としての乱用:「つらい気持ち」「生きづらさ」「孤独」などを和らげたい — こうした心理的な苦しみを抱え、少しでも「現実を忘れたい」「気分をまぎらわせたい」と感じる人が手を出しやすい。市販薬の乱用は、こうした“逃げの手段”になってしまうことがある。

  • 依存性/耐性の問題:初めは少量でも、薬の効果に慣れてしまい、だんだん量を増やさないと同じ感覚にならなくなる。そこから過量服用、繰り返し服用、依存状態へとつながるケースがある。

  • 手軽さゆえの見過ごされがち:違法薬物ではないため「違法じゃない=安全」「市販薬だから安全」という誤った安心感につながりやすい。だが、使用目的や用法を間違えば、処方薬以上に危険なことがある。

実際に、10代〜20代の若年層、特に女性を中心にオーバードーズの経験が報告されており、社会問題として警鐘が鳴らされています。

なぜ“特定成分入り市販薬”が危険なのか ― 成分レベルでの理解を深める

前回も触れたように、オーバードーズの原因になりやすい医薬品には、特定の「濫用等のおそれのある成分」が含まれています。たとえば、エフェドリン、コデイン、ジヒドロコデイン、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン、ブロムバレリル尿素などが典型的です。

これらの成分は、咳止め、去痰、鼻炎薬、総合感冒薬、眠気防止薬、鎮痛薬などに入っており、「風邪」「花粉」「鼻炎」「鎮静」「睡眠改善」など、ごく一般的な症状のために買われやすいのが特徴です。一方で、用量を守らず服用した場合には――

  • 中枢神経や交感神経を過剰に刺激/抑制し、不眠・興奮・幻覚・めまい・けいれん・呼吸抑制などを引き起こす

  • 耐性や依存性を形成し、量を増やさないと効果が得られず、常用・乱用・多量服用に陥る

  • 肝臓や心臓、呼吸器系など身体に重大な負荷をかけ、最悪の場合は命に関わる危険がある

といった深刻なリスクがあります。

登録販売者には、「どの成分が入っているか」を商品ごとに把握し、かつ「その成分のリスク」を理解しておく義務があります。単に「風邪薬だから安全」「眠くならない成分だから大丈夫」と思うのではなく、成分名とその作用・副作用を押さえることが、利用者の安全を守る第一歩です。

登録販売者が確認すべきポイント

濫用等のおそれがある医薬品について、販売時に登録販売者が確認すべき項目は明確に示されています。

● ① 購入者の年代・様子

若年者が対象製品を複数回購入する場合は特に注意が必要です。「以前にも使われましたか?」と自然に確認するだけでも、過量使用のサインをつかむきっかけになります。
18歳未満の場合は氏名・年齢確認が必要。また、大容量の製品は販売禁止。

● ② 必要量以上を求めていないか

一度に複数箱を求められた場合は、理由確認が必須です。
「念のため用途を教えていただけますか?」と丁寧に聞き、「お1人様1包装限り」にとどめて販売することが求められます。

● ③ 購入頻度

「週に2回以上」「毎週同じ薬を買う」など、明らかに通常使用量を超えるパターンを防ぐために、店舗内で共有し統一した対応が望まれます。
販売時には他の店での購入をしていないかの確認も必要です。

● ④ 受診勧奨

症状が長引いている場合や、購入目的が不自然と感じられる場合は、医療機関の受診をやさしく促すことも大切です。

現場で使える声かけ例

販売を断るのではなく、「安全に使ってもらうため」のコミュニケーションが重要です。

● 例1:若い方が大量購入を希望した場合

「せっかく来ていただいたので、安全に使えるように少し確認させてくださいね。今回どんな症状でお使いになりますか?」

● 例2:頻回購入が続く場合

「最近よくご利用いただいているようですが、症状は続いていますか?長引いているようでしたら、専門のお医者さんにも一度ご相談されると安心ですよ。」

● 例3:成分リスクを伝えるとき

「こちらのお薬には眠くなる成分などが入っていて、決められた量以上を飲むと体に負担がかかることがあります。心配なので、用量の範囲で使ってくださいね。」

“注意”ではなく“サポート”の姿勢を示すことで、利用者も安心して相談してくれます。

店舗としての対策

オーバードーズ防止は、店舗全体の取り組みで強化できます。

● 陳列の工夫

濫用の可能性が高い成分を含む製品は、レジ前・鍵付きケースへの移動など管理レベルを調整します。

● スタッフ間共有

「このお客様は頻度が高い」「複数箱を求めた」などの情報を共有し、個人判断に偏らない体制を作ります。

● ロールプレイ

新人でもしっかり対応できるよう、実際の会話モデルを使って練習すると全体の対応質が上がります。

オーバードーズの背景にある“心のサイン”

行政資料では、過量服薬の背景に精神的な不安、孤独感、家庭・学校のストレスなど心理的要因があることも示されています。
登録販売者は医師ではありませんが、「いつもと違う」「少し様子が気になる」という直感はとても重要です。

その場でできることは次のとおりです。

  • 受診や相談窓口の案内

  • 家族や周囲の人に相談することの提案

  • 必要以上の数量販売を避ける判断
    小さな声掛けが、本人の行動を変えるきっかけになることがあります。


市販薬の乱用・過剰服用は、ただ「薬のことをよく知らない人」が起こすとは限りません。本人が「つらさ」「苦しさ」から目をそらすためにわざと過量服用を持ちかけてくることもあります。そんなときこそ、登録販売者による丁寧な説明、注意喚起、そして必要なら相談窓口の案内を行う――それが社会の安全と、利用者の命を守る第一歩です。

また、乱用の疑いがあるお客様に対しては、「ただ断る」だけでなく、「あなたのために安全な使い方を一緒に考えたい」「もし心がつらいなら、相談できる場所がありますよ」といった声かけができることも大切です。依存症や精神的な苦しみの背景には、必ず“こころの痛み”があります。薬だけでは救えない、そのことを忘れてはいけません。

登録販売者だからこそできること

「登録販売者」の立場を持つ人たちには、単に医薬品を販売するだけではなく、“薬の安全な使い方を広め、オーバードーズの危険を防ぐ” という社会的使命があります。

近年は、若い世代だけでなく、ストレス社会や孤立感の広がりもあって「薬で逃げたい」という人が増えているかもしれません。だからこそ、私たち“販売のプロ”が、薬のリスクや正しい使い方、そして「つらい気持ちとの向き合い方」について、丁寧にお客様と向き合う必要があります。

また、販売現場だけでなく、協会や事業者向けのニュースレター、ブログ、SNS、地域向け啓発活動などを通じて、「オーバードーズの危険性」「正しい薬の使い方」「相談窓口の存在」を、もっと多くの人に伝えていくことも大事です。

あなたにできること ― 日々の実践として

  • 販売時に「いつものお客様だから」といって確認を怠らない

  • 若年者、初見の購入者、高頻度購入など「要注意」パターンには慎重に対応する

  • 「なぜこの薬を買うのか」「どんな症状で使うのか」を必ず聞き、必要な量だけ販売する

  • 飲み方・注意事項、副作用・併用注意について、添付文書を読みながらしっかり説明する

  • 必要であれば、地域の相談窓口や医療機関を案内する

こうした日々の積み重ねが、「薬の安全な流通」「人の命を守る」ことにつながります。

まとめとメッセージ

オーバードーズは、身近な「市販薬」だからこそ起きやすく、また見過ごされやすい問題です。用法・用量を守らずに安易に使えば、命にかかわる深刻なリスクがあります。

しかし、薬局やドラッグストアに立つあなた――つまり薬を販売する「登録販売者」だからこそ、“正しい使い方”を伝える“ゲートキーパー”になれる。薬の危険性を知り、適正販売と丁寧な対話を通じて、オーバードーズという社会問題を防ぐ力があるのです。

どうかこのブログを、同じ登録販売者の仲間や協会、地域の方たちへの呼びかけとしてお使いください。薬は正しく使えば、人を助ける。だからこそ、「売る」ではなく「伝える」「守る」というスタンスを忘れないでいたいと思います。

📄 参考資料(制度/啓発資料)

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