1. TOP
  2. 令和4年度第1回eラーニング 解答解説「水虫(たむしを含む)かも」

令和4年度第1回eラーニング 解答解説「水虫(たむしを含む)かも」

令和4年度第1回 「水虫(たむしを含む)かも」 確認テスト正答と解説

印刷して使われる場合は、下記からダウンロードできます

「水虫(たむしを含む)かも」確認テスト正答と解説

問1.【受診勧奨】医療機関への受診が必要かどうかを振り分ける。
〔答:すべて○〕
足白癬と思って受診した患者の13~33%が別の皮膚疾患※という報告もあり、正確な判断には培養や鏡検が必要です。
※:紅色陰癬、カンジダ症、疥癬、接触性皮膚炎、異汗性湿疹(汗疱)、掌蹠膿疱症、手掌足蹠角化症、進行性指掌角化症等。
注意!:受診勧奨の際、私達は診断ができないので、思い当たる病名などを口に出さないように注意しましょう。
(1)①訴えの歩行障害は間歇性跛行と呼ばれ、糖尿病によって脚の血流が悪くなって起こる特徴的な症状。進行した糖尿病では神経障害や易感染も加わり、急速に壊疽に進み切断が必要になるおそれがある。糖尿病患者の下肢切断頻度は非糖尿病患者の7.4 から41.3 倍との報告もある。
(2)①帯状疱疹のおそれ。72 時間以内の抗ウイルス薬適用が推奨される。脊髄後根神経節あるいは三叉神経節に潜伏した水痘・帯状疱疹ウイルスが免疫低下時等に再活性化し,感染した神経線維が支配する領域の皮膚に,紅斑と小水疱が帯状にかたまって生じる。水疱から水痘を他人にうつしうる。顔面の症状では角膜や結膜の炎症、耳鳴りや難聴、顔面神経麻痺が残ることがある。
②問題文のような皮膚症状を総称して環状紅斑という。鱗屑がみられることもある。内臓病変と関係する皮膚変化=デルマドロームの場合がある。感染症、薬剤、膠原病、悪性腫瘍に誘発されるので、症状を抑えることを目的にするべきではない。体部白癬との鑑別には慣れが必要なので、薬が効かないなら早めに受診。この他、初期において症状が急激でも全身的でもなく、環状に見えるものには、「尋常性乾癬(⑦参照)」、「多形滲出性紅斑(マイナー型※)〔左右対称に現れ、鱗屑がみられず、水疱はあっても少ない。自然に治ることが多い。〕」、「環状肉芽腫〔鱗屑、水疱がみられず、自然に治ることが多い。〕」等、様々な疾患がある。
※: メジャー型は重症多形滲出性紅斑と呼ばれ、症状が急激で、中毒性表皮壊死症、スティーブンス・ジョンソン症候群が含まれる。
③角質増殖型の足白癬のおそれ。紅色白癬菌が原因で、一般論※としては内服薬を使う必要がある。通常1~2カ月ほどの内服治療で改善する。爪白癬を合併することも多く、その場合には治療に時間がかかる。
※:尿素軟膏との混合剤で外用した場合、ビフォナゾール、塩酸ブテナフィン、塩酸テルビナフィン、ラノコナゾールは12 週での有効率が90%前後という報告がある。一方、アモロルフィンでは逆に有効率が低下した報告がある。
④爪白癬のおそれ。白癬菌は足白癬の病巣から爪甲の爪先側または横の縁より爪甲下に侵入する。爪白癬は経口抗真菌薬が主な治療法だが、近年では完全治癒率は劣るものの外用薬も承認されいる。いずれも医療用なので受診勧奨が基本。しかし、日本皮膚科学会の『皮膚真菌症診断・治療ガイドライン』によると、従来の外用抗真菌薬であっても爪甲の光沢が失われていないごく初期なら、病変部を除去後に使用すれば治癒することがあり、また、爪表面の傷口から白癬菌が侵入して爪甲に点状ないし斑状の白濁を生じたものは、白斑部を削り取り、外用抗真菌薬を使用するだけで治癒することが多いという。
⑤しらくも=頭部白癬のおそれ。化膿性炎症の強いケルスス禿瘡と、落屑を伴う脱毛斑を生じるなどする頭部浅在性白癬に分類される.治療の原則は経口抗真菌薬で、家族等への発症・感染拡大の予防を目
的に外用薬や抗真菌薬入りシャンプーが使われることがある。その他、フケの原因になる脂漏性皮膚炎はマラセチア※との関連が指摘されており、ミコナゾール入りの医薬部外品シャンプーが発売されている。
※:マラセチアと言えば癜風(でんぷう)とマラセチア毛包炎の原因菌だが、産生される刺激物により脂漏性皮膚炎の原因にもなっている。アトピー性皮膚炎患者IgE 抗体の抗原も一部のマラセチア種による可能性が示唆されている。
⑥掌蹠膿疱症のおそれ。掌蹠膿疱症は掌にもでき、ときに胸の周辺に痛みを伴う。約8割が喫煙者。扁桃腺や歯周病などの病巣感染や金属アレルギーが関与することがあるが、7~8割の患者は原因不明で対症療法。しかし、3~7年で自然消退する。(「水疱」で始まる場合は、「ニセ水虫」の代表異汗性湿疹=汗疱状湿疹のおそれ)
⑦尋常性乾癬のおそれ。頭部、肘・膝、臀部、すね等にできやすい。発疹は癒合して大きな病変を作ることも。

問2. 【一般用医薬品でも対応できる水虫かも】
〔答: ①C、②D、③K、④B、⑤A、⑥F、⑦J〕
①カンジダ症にも効果がある成分を選ぶのが無難(問3解説の表を参照)。
②,③掌蹠膿疱症は季節的な変化はみられず、痒みも強くはない。白癬症と異汗性湿疹は、いずれも痒みもあって膿疱になることは少ない。実際にはこれらの患部だけを観てそれぞれを鑑別することは難しい。参考⇒問5⑤
④,⑤,⑥陰嚢はケラチンが少なく、白癬菌が寄生することはまれである。顔面は白癬症にかかりにくい部位なので、ステロイド剤の外用歴についても確認し、皮膚が薄く刺激を受けやすいことに留意する。角質層が薄く治り易いが、足白癬にもかかっている場合が多いので、併せて治療する必要がある。
⑦皮膚感染症でなければ、炎症にはステロイド性抗炎症成分の効果が高いが、過剰な免疫反応を抑制する働きが副作用にもなるので、使用する場所や使用期間によってはNSAIDs を用いる。

問3.【水虫かも用薬の主作用の特徴】
〔答: ①F、②C、③D、④B、⑤A〕
①~③皮膚に対する外用抗真菌薬の効能・効果は医療用医薬品においては、(1)白癬(足白癬、手白癬、体部白癬、股部白癬)、(2)皮膚カンジダ症(指間びらん症、間擦疹、乳児寄生菌性紅斑、爪囲炎)、(3)癜風 であるが、一般用の適応範囲は「水虫、ぜにたむし、いんきんたむし」であるから、販売の際の着目点は、ⅰ)部位(足白癬、手白癬、体部白癬、股部白癬)から臨床成績の高さで選ぶか(原因となる真菌には傾向がある)、ⅱ)「一日一回」のような皮膚貯留性の高さで選ぶか、ⅲ)判別が困難で抗真菌スペクトルの広さで選ぶかである。

④ ストロング:ベタメタゾン吉草酸エステル、フルオシノロンアセドニド ミディアム:ヒドロコルチゾン酪酸エステル、デキサメタゾン、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル ウイーク:プレドニゾロン、プレドニゾロン酢酸エステル、デキサメタゾン酢酸エステル

問4.【患者情報確認・生活スタイル】
〔答:①B、②F、③④HI、⑤K、⑥D、⑦C〕
①外用抗真菌薬による接触性皮膚炎の多くは刺激性で、アレルギー性のものは少ない。クリーム剤やパウダー剤はアルコールを含まず、刺激が起こりにくいので、使用上の注意への記載は除外されている。
②このような皮膚の状態の場合には、収斂保護成分の酸化亜鉛(亜鉛華軟膏など)、組織修復成分のアラントイン等を含む製剤、中黄膏等を利用する機会でもある。外用抗真菌薬によるアレルギー性接触皮膚炎は多くはない。
③,④「乳幼児」は皮膚が弱い。「化膿した患部」は、抗真菌薬では効果が期待できないので、先に抗生物質やサルファ剤を使う。水虫と思った患者のうち、13~33%が湿疹・皮膚炎等だったという報告もある。
⑤いずれも医療用では「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること。[妊娠中の使用に関する安全性は確立していない。]」と記載されている。
⑥免疫抑制作用があり、皮膚感染症を誘発したり、増悪するおそれがある。非ステロイド性抗炎症成分を含む外用消炎鎮痛薬にも記載がみられるが、こちらの理由は症状を不顕性化するおそれがあるためである。
⑦「クロルヘキシジンによりアレルギー症状を起こしたことがある人」は使用できない。

問5.【アドバイス】
〔答: ①○,②×,③○,④×,⑤○〕
②白癬菌は付着から浸透まで24 時間以上かかり、毎日石鹸で洗えば十分。角質層が傷つくと却って感染を招く。
③ばい菌の巣になる。例えば,うおの目・いぼ・たこ用薬の絆創膏は,「2~3日毎に交換してください」等の記載もあるが,読み進めると「入浴などでぬれた場合は貼りかえてください」等の記載がある製品が多い。
④公益社団法人日本皮膚科学会『皮膚真菌症診断・治療ガイドライン』における足白癬の治療法によれば,自覚症状が無くても,趾間から足底全体にかけて外用抗真菌薬を最低1カ月は塗り続けなければならない。