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令和4年度第2回eラーニング 解答解説「育児中の心配と家庭薬」

令和4年度第2回 「育児中の心配と家庭薬」 確認テスト正答と解説


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「育児中の心配と家庭薬」確認テスト正答と解説

問1.【受診勧奨】〔答:すべて○〕
①腸閉塞のおそれ(主に腸重積)。小腸閉塞では嘔吐がよくみられる※1。部分的に閉塞すると下痢する。
嵌頓ヘルニア、腸重積、腸捻転によって血行障害を伴う腸閉塞が起きると、激しい腹痛を起こして腸管が壊死する(絞扼)。下血は血行障害を疑う症状の一つ。また、腸管が破裂して腹膜炎を起こ
すと圧痛と発熱がみられる。血中に細菌が侵入し敗血症を起こしたり、水と電解質の再吸収が不十分になり不整脈が起きたりすることもある。乳幼児では腸重積の可能性が高い。
※1:嘔吐は、逆流防止機構の不完全な乳児期には非常に頻度が高い(ミルクアレルギーも原因に)ことに留意する。
②脱水症のおそれ。脱水とは体内水分量が著しく欠乏し、程度は様々であるが電解質も欠乏している状態である。一般に体重の約5%の減少が軽度、約10%が中等度、約15%になると重度の脱水と判断される。症状および徴候として、口渇、嗜眠、粘膜の乾燥尿量の減少、および、脱水の程度が進行するにつれて、頻脈、低血圧、ショックなどが現れる。治療は入院の上、経口または静注での水分および電解質補充により行う。
③鼠経ヘルニア(脱腸)のおそれ。胎児期に精巣・卵巣が定位置に固定されると閉じる下腹部の隙間(内鼠径輪)が生後に残り、そこからはみ出した腹膜の袋(腹膜鞘状突起)に腸管、卵巣、卵管などが入り込み、膨らんだ状態で腹圧が高まると脱腸が起きる。3~5 歳の時期に、より高い腹圧がかかるようになって発症することもある。痛みは無いが、隙間の締め付けで浮腫みを生じて戻らなくなり(嵌頓)、血流が途絶えて絞扼性腸閉塞になると腹痛が起こる。力を抜くと戻ることが多いが、戻らない状態が続くなら早急に受診すべき。
④メッケル憩室、大腸ポリープのおそれ。メッケル憩室は、胎児期の初期に、臍帯と小腸との間に一時的に発生する管が消えずに残った袋状の突起物。出血、腸閉塞、憩室炎を起こすタイプがある。多くは腸粘膜で被われているが、胃粘膜が存在することがあり、分泌された胃酸によって小腸に潰瘍ができ,そこから前触れなく下血することがある。そのため便は、鮮紅色やレンガ色になったり、イチゴゼリー状になったり、あるいは血液が分解されて黒く見えたりする。憩室炎を起こすと、重度の腹痛、腹部の圧痛、および嘔吐が起こる。ポリープとは消化管の粘膜表面にできたキノコ状に盛り上がる腫物。成人では癌との鑑別が重要だが、小児に発生するのはほとんどが良性である。小児の消化管ポリープのほとんどは若年性ポリープであり、多くは血便で発見されるが、腹痛や腸重積が発見のきっかけになることもある。
⑤血性嘔吐・黒色便などの出血症状は、肥厚性幽門狭窄症や胃食道逆流症による嘔吐から発生する逆流性食道炎が主な原因であるが、胃・十二指腸潰瘍の可能性も考えられる。胃潰瘍は新生児でもみられ、分娩時のストレスによるものとされている。幼児期以降に食道静脈瘤が増えてくるが、静脈瘤が破裂した場合は大出血をきたす。
⑥発熱と発疹がみられたら、学校感染症の指定、病歴把握の観点からも受診が望ましい。
・川崎病は、主に4歳以下の小児に発熱と発疹が生じ、口唇の紅潮と苺舌、両眼球結膜の充血、頚部リンパ節腫脹等を伴う。冠動脈瘤ができると、狭心症や心筋梗塞のリスクが高まり、手術や永続的な管理が必要になる。
・麻疹(はしか)は、麻疹ウイルスによって引き起こされる感染症で空気感染する。潜伏期間は10~12 日。発熱が2~4 日間続き、上気道炎と結膜炎の症状が現れ増強し、発疹とともに再び3~4 日間高熱が出る。合併症による死因に肺炎と脳炎がある。
・風疹(3日ばしか)は風疹ウイルスによる感染症で、潜伏期間は14~21 日。発疹、耳介後部のリンパ節が腫脹する。麻疹より軽症で、発熱は約半数にみられる。成人では先天性風疹症候群の予防にワクチン接種が重要。
・水痘(水疱瘡)は水痘帯状疱疹ウイルスによる感染症で、潜伏期間は2 週間程。小児は最初に掻痒を伴う発疹が頭皮から体幹・四肢、ときに粘膜に出る。紅斑、丘疹を経て短時間で水疱となり、痂皮化。倦怠感、掻痒感、38度前後の発熱が2~3 日間続く。
・A群溶血性連鎖球菌による急性咽頭炎は、2~5 日の潜伏期間の後、突発的に38℃以上の発熱。前頸部リンパ節腫脹、発疹が主に腋窩や鼠径部など皮膚のしわの部分に生じる。軽快後の急性糸球体腎炎の合併に注意。
⑦急性中耳炎のおそれ。ウィルスや常在菌によるもの。めまいや難聴、髄膜炎や脳膿瘍の合併の可能性もある。

問2.【セルフメディケーションでも対応できる子供の異変】〔答:①L,②H,③B,④A,⑤D,⑥G,⑦I,⑧J,⑨K,⑩C〕
泣き入りけいれんは、強く泣くことによって無呼吸となり、脳が一過性無酸素状態に陥り、意識消失と脱力やけいれんなどを生じる。通常すぐに呼吸が再開し後遺症は残らない。てんかんと違い発作前に必ず大泣きや驚く等の誘因があり、発熱が無く無呼吸の段階があるのが特徴で、睡眠中には発生しない。
子どもの脳は熱に敏感で、風邪などの熱でもけいれん発作を起こすことがある。一般に生後6 か月~5 歳までに、発熱時(通常は38 度以上)に起きるけいれん発作を熱性けいれんと呼ぶ。熱性けいれんで重要なことは、髄膜炎、急性脳症など熱性けいれん以外の重い病気と区別することである。初めての熱性けいれんであれば、救急外来など医療機関を受診する。過去に熱性けいれんを起こしたことがある小児が、再び熱性けいれんを発症した場合、5 分以内にけいれん発作が治まった場合は自宅で様子を見ることもある。その際、意識が1 時間以内にもどってくるかどうかは確認する。なお、小児における熱性けいれんの再発率は約30%である。

問3【医薬品の使い分け】
(1)〔答:①A,②D,③C,④B,⑤E,⑥H,⑦I,⑧G〕
小児の疳は、乾という意味もあるとも言われ、痩せて血が少ないことから生じると考えられており、薬を使用する際は、鎮静作用のほか、血液の循環を促す作用があるとされる生薬成分を中心に配合されている。
中国医学では、顔面にある穴(耳,口,目,鼻)は五臓(肝臓,心臓,脾臓,肺臓,腎臓)の精気の通り道と考えられており、病邪によって閉塞されるとバランスが乱れ、精神的症状や肉体的症状を起こすと考えられている。そのため、その塞がりを開く働きのある開竅薬によって治療する。麝香、牛黄、竜脳はその代表的な薬物。
「小児五疳薬」は,かつては関ヶ原を境に,東が「救命丸」,西が「奇應丸」だったという。宇津権衛門が下野・高根沢で救命丸を製造・販売し始めたのも、樋屋忠兵衛が摂津で樋屋奇應丸を製造・販売し始めたのも元和年間(1615~1624 年)でその時期は非常に近いが、それぞれに誕生秘話がある。
(2)〔答:①D,②F,③G,④B,⑤E〕しばりに注意!
④.抑肝散、抑肝散加芍薬黄連には、しばりに「やや消化器が弱く」がない。

問4.【患者情報確認・生活スタイル】〔答:①A,②C,③B,④D,⑤F,⑥H,⑦I〕
参考:承認基準の設定された漢方製剤で、用法・用量欄の対象年齢等に生後3 ヵ月未満が含まれている場合は、「してはいけないこと」欄に「生後3 ヵ月未満の乳児」に服用させないよう記載される(例えば「2 歳未満」の用法・用量が記載されているもの)。
小児五疳薬には、制度的なルールはないので、添付文書に従って使用する。
⑥甘草の量は次のとおり。小建中湯:2~3g、桂枝加竜骨牡蛎湯:2g、柴胡加竜骨牡蛎湯:2g以内(甘草のない場合も可)、抑肝散・抑肝散加陳皮半夏:1.5g、甘麦大棗湯:3~5g、柴胡清肝湯1.5~2.5g

問5.【アドバイス】〔答:①×,②×,③×〕
①けいれん時に口に物を噛ませると、呼吸ができなくなる可能性があるため誤り。衣類をゆるめて顔や体を横向きにし、息がつまらないようにする。可能であれば発作発症時刻や継続時間、けいれん発作中の様子(手足のふるえは左右両方か片方か、目はどちらを向いていたか等)を記録しておく。
②熱があっても元気な場合や38.5℃以下であればすぐに解熱剤を使用する必要はない。
③正常時の体重を基準に、脱水により減少した体重の割合によって脱水の程度を確認する。急激な体重の減少、皮膚の乾燥、尿量の減少、意識障害などがみられた場合、口から水分を摂ることが難しい場合などは、すぐに受診することが求められる。体重の約10%減(中等度)では入院の必要も出てくる。