令和7年度第1回eラーニング 解答解説「皮膚の損傷」
令和7年度第1回「皮膚の損傷」正答と解説
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解答解説-皮膚の損傷
問1.【受診勧奨】医療機関への受診が必要かどうかを振り分ける。〔答:すべて ○〕
注意!:診断はできません。受診勧奨の際、思い当たる病名などを口に出さないように注意しましょう。
(1) ①刺さった異物が止血していて、抜いた拍子に大出血を起こす場合があるので、そのまま受診。
②破傷風のおそれ。3~21日の潜伏期間後の症状。痛みを伴って筋肉の痙攣やこわばりが現れる。やがて顔が笑っているように見える、嚥下が難しくなる、頭部から背中まで弓なりにそり返る等も。土壌中にいる嫌気性芽胞菌※の破傷風菌は創傷部位から侵入し、毒素が全身に回って神経を「過活動の状態」にする。自然災害時の怪我も危ない。致命率は約30%。昭和43年から始まった3種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風)だが、副反応が問題になり、昭和50年2月から56年に改良されるまで(令和3年に40~46歳の人)接種率が低下した。
※:一部の細菌が持つ耐久性の高い細胞構造。人体に使用できる消毒薬では無効。外でけがしたら傷口をよく洗う!
③ガス壊疽のおそれ。傷口から細菌が筋層に進入して増殖、ガスを発生して筋肉が壊死し、かつ全身性の中毒症を起こす。糖尿病はその誘因となる疾患の代表例。皮下にたまったガスで腫れ、血流が悪くならないように切開し、必要に応じて病変部の切除、原因菌に応じた抗菌薬が投与される。重症の場合には早期の患肢切断も必要に。
(2)①低温やけどのおそれ。やけどの重症度は深さと面積で決まり、深さは温度と接触時間で決る。アンカや温風による低温熱傷では、見かけより損傷が深い。Ⅲ度熱傷では、皮膚表面は壊死して白くなり、そこが脱落すると潰瘍になる。神経も壊れ痛みを感じない。壊死組織は除去しないと治癒の遅れと細菌感染を招く。感染を起こすと治りにくくなり痕を残しやすい。
やけど面積が広いと脱水症状を起こす※¹。面積に応じた受診勧奨は、深さの判断を避けたいので、Ⅲ度においても軽症の範囲とされる2%(手掌=1%が目安)を境界としておく。なお、後遺症を残しやすい顔・手・会陰などは2%と言わず受診勧奨が基本。直ちに流水で痛みが楽になるまで冷やしてから受診するが、広範囲では体温低下にも注意※²が必要。鼻毛が焼けて声がかすれる場合は、気道粘膜が重症のおそれがある。
※¹:循環血液量の減少に伴って尿量の減少、血圧低下、頻脈が見られ、ショックを起こすこともある。
※²:赤十字救急法⇒「10分以上広範囲を冷却することは避ける」。高齢者・小児は、脱水症状・体温低下に特に注意!
②内部に膿がたまる蜂窩織炎を起こすことがある。皮下脂肪組織で感染が広がったもので“蜂巣炎”ともいうが、それより浅いと“丹毒”という。最悪の場合は敗血症で死に至る。適切な抗菌薬の内服あるいは点滴静注が必要。
③褥瘡のおそれ。黄色や黒ずんだ壊死組織があると治りにくいので、それを取り除く処置=デブリードマンを行う必要があるかもしれない。異物や汚れが残ってる場合も治らないし、皮膚を縫い合わせてもふさがらない。
④動物などによる咬創は化膿しやすく、動物が病気に感染していることもある。動物にかまれたら、どんなに小さなキズでも、水でよく洗い流して受診させる。現在、我が国では狂犬病※の発生はないが、保健所に犬の特徴を連絡して捕獲・観察してもらうことも重要である。
※:狂犬病ウイルスは、ネコ、キツネ、オオカミ、スカンクなどによっても感染する。
問2.【セルフメディケーションでも対応できるやけど及びキズ】〔答: ①A,②D,③H,④F〕
ハイドロコロイド絆創膏:バンドエイドキズパワーパッド、リーダーハイドロ救急パッド、ネクスケアハイドロコロイドメディカルパッド、デルガードクイックパッド、ケアリーヴ治す力、カットバンリペアパッド、エルモハイドロ救急バン、瑞光メディカルハイドロコロイド包帯アドバンスetc
保湿パッド:瑞光メディカルプラスモイスト、白十字モイスキンパッド、ケアエイド大きな傷口保護パッド、メディケア傷あて材 etc
「今日のOTC薬」に合わせ、やけどでセルフメディケーション対象となるのはⅠ度熱傷の場合のみとした。
以前の添付文書には「体液の漏れや本品の剝がれがなく感染症のおそれがない場合には最大5日間使用できる」としか書かれていなかったが、現在では最低2,3日に1 回は観察するよう明記されている。防水フィルムは吸
収剤がないので保湿パッドなどを利用しないと滲出液に苦労する(滅菌処理の関係で傷口には直接貼らないよう書かれているものが多い)。白色ワセリンを塗布した食品用ラップで対応することも不可能ではないらしい。
ハイドロコロイド絆創膏は、貼る前と貼った後にそれぞれ約1分間手のひら温めると皮膚へのなじみがよくなると説明のある製品がある。また、お湯をかけながらはがすとよいともある。
問3.【やけど及びキズの治療に用いる成分の特徴】
(1)〔①B,②E,③G,④F,⑤D〕
消毒薬のウイルスへの効果は、濃度、時間及び温度にもよるが、消毒用アルコール、ポビドンヨード、グルタラール又は次亜塩素酸でないと期待できない。アルコールは、揮発するために残留性がなく安全な反面、濃度と作用時間を確保しにくい。選択肢のうち創傷面の消毒には、クロルヘキシジングルコン酸塩、アクリノール、ポビドンヨード、オキシドール、ベンザルコニウム塩化物が使われてきた。消毒用アルコールや、それを含む希ヨードチンキは刺激が強く、傷口や粘膜には不向き。ポビドンヨードは簡単に色が取れるが、希ヨードチンキやマーキュロクロムは色が濃い上に取れにくく、傷口周辺の状態がわかりにくくなることがある。パウダータイプの消毒薬も、同様の理由で薦められないとする文献がある。今日では消毒薬の使用自体、その毒性から否定的見解が多く、よく洗ってから湿潤療法をとるのが一般的。ただ、自ら処置を行う場合、治療部位の汚染・化膿のリスクを考えると、消毒薬を使った処置も全否定できない。アドバイス次第。
(2) 〔答: ①B,②C,③A,④E,⑤G〕
④ヘパリン類似物質製剤には、「きず・やけどのあとの皮ふのしこり・つっぱり(顔面を除く)」の効能効果がある。
⑤ドルマイシン軟膏(ゼリア新薬工業)。一般に抗菌剤(テトラサイクリン塩酸塩、オキシテトラサイクリン塩酸塩、クロラムフェニコール、フラジオマイシン硫酸塩、ナイスタチン、カナマイシン等)の効能・効果は「化膿性皮膚疾患(とびひ、めんちょう、毛のう炎)」。「火傷」の効能効果を持つOTC のサルファ剤は、以前はいくつかあったが、現在ではすべて製造終了したとみられる。
問4.【患者情報確認・生活スタイル】〔答: ①D,②E,③B,④F,⑤C,⑥A〕
②ヨウ素系も金属腐食性があり、口腔内適用のものでは「本剤の使用により、銀を含有する歯科材料(義歯等)が変色することがある」とある。
④コルチゾンに換算して1g 又は1mL 中0.025mg を超えて含有する製剤に「長期連用をしないこと」の記載がある。医療用ステロイド性外用薬の「熱傷」に適応するものは、皮膚の再生が抑制され、治癒が遅延するおそれがあるため、第2度深在性以上には禁忌。市販薬においても「やけど」への選択肢ではあるものの、効能・効果に「やけど」の記載がある市販薬は現在1社2製品のみ。
問5.【アドバイス】〔答:①×,②○,③○,④○,⑤○〕
①これらを併用しないことになっている。使用した場合には水道水などでよく洗い流してから使用する。
②使用後に化膿している場合には受診勧奨。吸着部の液が透明またはグレーのゲル状で、臭いが無いならOK。
③長く広範囲を冷却すると低体温をきたし、意識障害や不整脈を起こすことがあります。
④ベンザルコニウム塩化物液、ベンゼトニウム塩化物液は逆性石鹸(陽イオン型界面活性剤)なので、いわゆる石鹸(陰イオン型界面活性剤)と沈殿を生じて効果が弱まることは有名だが、効果が弱まるという点ではクロルヘキシジングルコン酸塩液、ポビドンヨードについても医療用の添付文書には記載がある。
⑤糖尿病や血行障害の治療を受けている人は相談するよう、使用上の注意にも記載されている。治りが悪くなったり痕が残ったりすることがあるので、そのときには皮膚科や外科で手当てしてもらう。