【登録販売者のまめ知識】葛根湯だけじゃない!風邪時に使える市販漢方の正しい提案方法
目次
漢方薬を選ぶ基本の視点
「風邪だからとりあえず 葛根湯(かっこんとう)」というイメージを持たれている方も多いですが、実は風邪=葛根湯ではありません。
漢方薬は「病名」ではなく「症状・体質・時期」によって選ぶのがポイントです。
例えば「寒気が強い」「汗をかいていない」「肩背が張る」などの初期症状には葛根湯が適しますが、「のどが痛い」「咳が出る」「鼻水がひどい」段階では別の処方を選ぶべきです。
以下では、風邪の進行段階・症状別に使える漢方薬を整理します。
症状・時期別の漢方薬と解説
(1)初期(悪寒・寒気・肩こり・頭痛・発汗なし)
この段階では、体をあたためて発汗を促し、病邪(風寒など)を外に追い出すことが重視されます。
-
葛根湯(かっこんとう)
→ 肩や首のこり・頭痛・寒気といった典型的な風邪のひき始めに。汗をかいていない段階が鍵。 -
麻黄湯(まおうとう)
→ 悪寒・発熱が強く、比較的体力のある方に用いられ、体を温めて発汗を促し、関節・筋肉の痛みを伴うこともあります。 -
桂枝湯(けいしとう)
→ 汗が出ている、または体力がやや低下している方向け。寒気・発熱があっても汗が出ているような場合はこちらを選ぶことがあります。
店舗でのアドバイスポイント
・「寒気がありますか?汗はかいていませんか?肩や首がこっていませんか?」など、初期段階かどうかを確認しましょう。
・体力が十分ある方か、弱っている方かでも処方が変わるので、「普段の疲れや体調はいかがですか?」という質問も有効です。
・「家に常備しておくと安心な漢方です」と提案すると、お客さまにも受け入れられやすいです。
(2)中期(のどの痛み・咳・鼻水)
風邪が進行し、のどの痛み・乾いた咳または痰が絡む咳・鼻水など呼吸器中心の症状が出る段階です。
-
銀翹散(ぎんぎょうさん)
→ のどの痛み・発熱・炎症が強い場合に。扁桃腺の腫れ・のどの違和感がある方に比較的適しています。 -
麦門冬湯(ばくもんどうとう)
→ 乾いた咳・のどが渇く感じ・痰が少ない咳など。気道を潤し、咳を軽減する目的で用いられます。 -
小青竜湯(しょうせいりゅうとう)・辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)
→ 鼻水・鼻づまりに特化。透明またはサラサラの鼻水には小青竜湯、粘性の鼻水・鼻づまり・黄色っぽい鼻汁には辛夷清肺湯が適応されます。
店舗でのアドバイスポイント
・「のどの痛みがありますか?咳は乾いた感じですか?痰が絡みますか?」という症状の詳細を伺いましょう。
・鼻水の色・粘り具合・鼻づまりの有無を確認し、適切な処方を提案します。
・既に市販の風邪薬を使用中の場合、併用可否・重複成分・副作用リスクの確認も必要です。
(3)後期/こじらせた風邪・長引く症状
風邪が長引いている、だるさ・食欲低下・倦怠感・ぶり返し感がある場合には、体力回復・免疫力向上の観点から漢方を選びます。
-
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
→ 体力・気力が落ちている方向け。免疫力を高めたり、慢性化・長引きの風邪からの回復補助として。 -
柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
→ 風邪がぶり返したり、症状が長く続いたりする方に。 -
玉屏風散(ぎょくへいふうさん)
→ 風邪を引きやすい体質の方、予防目的。抵抗力・防御力を高める漢方として紹介されています。
店舗でのアドバイスポイント
・「熱は下がりましたか?でも体がだるい・食欲が出ない・気力が出ない」といった声には後期用漢方を案内しましょう。
・「風邪を繰り返しやすい」「季節を問わずひきやすい」という方には、予防的な漢方(玉屏風散など)も視野に入れましょう。
・ただし、体調・併用薬・持病の有無によって漢方の選択・用量にも注意が必要ですので、「医師・薬剤師・登録販売者に相談ください」という形で案内を添えると安心です。
登録販売者が押さえておきたい販売時のポイント
-
体質・症状の聞き取り:風邪だからといって一律同じ漢方を勧めず、「悪寒・汗の有無」「のど・咳・鼻水の状態」「だるさ・体力の有無」などを確認しましょう。
-
病期を意識して案内:初期・中期・後期のどこかを把握し、それに応じた漢方を選ぶよう説明できると、お客さまの信頼につながります。
-
併用薬・安全性の確認:市販の総合感冒薬・のど飴・解熱剤などを既に使っているか、持病がないか、妊娠・授乳中かなども確認し、併用の可否・控えるべき症状のサインをお伝えしましょう。
-
フォローアップ案内:漢方は即効性が高いものもありますが、症状の改善が見られない・悪化する場合には医療機関受診を促しましょう。
-
提案型の常備案として:初期用の葛根湯などは「家庭に1つあると安心」品として提案できます。「肩こり・首のこり・寒気がしたらすぐ飲めます」という説明が効果的です。
-
症状で使い分ける具体的アドバイス:例として、「咳が出るけれど痰が絡まない」「乾いたのどの違和感」「鼻水がさらさら/粘る」など、お客さま自身が自覚できる視点で使い分けを説明しましょう。
まとめ
風邪の時に用いられる漢方薬は、「風邪をひいたからこの薬」という一律な選び方ではなく、**「今出ている症状」「体の状態(汗・寒気・のど・咳・鼻水)」「体力・体質」**の3つを軸に選ぶことが大切です。
初期には葛根湯・麻黄湯・桂枝湯、中期には銀翹散・麦門冬湯・小青竜湯など、後期・長引き風邪には補中益気湯などが選択肢となります。
また、登録販売者としてはお客さまに「どの段階か」「どんな症状か」を丁寧にヒアリングし、併用薬・安全性・体質・継続目安などを説明できるように準備しておくと、信頼度・提案力が高まります。
最後に、登録販売者として継続的な学びも非常に大切です。最新の販売知識・症状対応・OTC薬・漢方の動向などを学べる eラーニング研修 を活用されることをおすすめいたします。お客さまからの相談により的確に応答できるよう、ぜひ定期的な研修を受講し、販売力・信頼力をさらに高めていきましょう。
以上、登録販売者の皆さまが市販の漢方薬をより自信をもってお客さまへご案内できるよう、症状別の漢方活用法をご紹介しました。店舗での対応やアドバイスの参考にしてくださいね。
継続的研修 受講は義務
大阪府医薬品登録販売者協会は厚労省発出「登録販売者に対する研修の実施要領」に則った登録販売者の「継続的研修」を開催しております。
継続的研修 受講は義務となっておりますので、当協会の継続的研修のご受講をお待ちしております。
詳細・お申込みは↓こちらから

