【登録販売者 まめ知識】OTC胃腸薬の基礎知識について
胃腸薬は、私たちの日常生活において欠かせない健康サポートアイテムです。食生活やストレス、生活習慣の乱れによって引き起こされる胃腸の不調を和らげ、快適な日常を取り戻すために役立ちます。生活環境を考慮し、店頭でのお客様へのアドバイスに役立つ知識をご紹介いたします。
目次
様々な胃腸トラブルに関する基礎知識
胃に負担がかかると、もたれ、胃部不快感、腹部膨満感、胸やけ、胃酸過多、胃痛、げっぷ、吐き気(むかつき、二日酔い)、嘔吐、食欲不振、消化不良、便秘、下痢などのトラブルが生じます。
よくあるケースとして、まず胃もたれや腹部膨満感が起こり、続いて過剰に分泌された胃酸が胃や食道の粘膜を荒らし、胃の痛みや胸やけの症状になっていきます。ストレス等で胃の機能障害になると、吐き気、げっぷ、食欲不振、便秘、下痢などが起こります。
また、食べ過ぎ・飲み過ぎで胃壁が極端に引き伸ばされると、胃壁の筋力が低下し、消化のための運動機能が低下することで、消化しなければと胃酸が大量に分泌されることで胃の粘膜を荒らします。
塩味の濃いものをたくさん食べると、浸透圧により胃の粘膜の中の水分が吸い出され、粘膜細胞が傷つけられるケースがあります。消化不良は何らかの原因で胃腸の消化機能が低下、食物の消化がうまくいかなくなり、食欲不振や腹部の膨満感、胸やけ、下痢などの症状となって現れます。
食べ過ぎによる消化不良でも、胃もたれや胃痛・腹痛が起こるとされます。この場合、消化剤が入った胃腸薬を服用することが望ましいと考えます。胃酸の分泌を調整する制酸剤や胃酸分泌抑制剤の胃腸薬は、かえって消化不良に対して悪影響をもたらし胃痛・腹痛を悪化させる場合があります。
食べ過ぎたわけでもないのに翌朝まで胃が重く感じる、時間が経っても食べ物が胃に残っているように感じる、といった症状は胃腸の機能が低下しているサインです。消化機能の低下は、疲れや加齢など色々な原因で起こるので、弱った胃の働きを正常にして消化を助ける健胃薬や、消化を助ける消火剤が入った胃腸薬を提案します。
胃が働きすぎて起こっている症状なのか、働きが鈍くなってしまって起きている症状なのか、状況を見極めて、その人に合った胃腸薬を推奨することが基本的な姿勢になります。
胃痛や下痢の症状が起こる背景を知る
ストレスや食べ過ぎ、胃の痙攣などが原因で胃痛が起こります。ストレスがかかると交感神経が優位となり、全身の血流の割合が筋肉の方へと偏り、その結果、胃腸が冷えて働きが悪くなることも。逆にリラックスすることで副交感神経が優位となり、内臓に血流が回ることで胃腸が温まり本来の機能を取り戻すとされます。
胃酸タイプは過剰に分泌された胃酸が原因で胃の内側にある胃粘膜を攻撃し、炎症をおこす。空腹時などにシクシク、キリキリと痛む場合があります。
胃痙攣タイプは胃の筋肉が痙攣を起こし、神経を刺激することでキューっと差し込むような痛みと表現されることが多く、吐き気や食欲不振などを伴うこともあります。
お酒を飲むと下痢をする、というような人は少なくありません。アルコールは胃において約20%吸収され、残りは小腸で吸収されます。血液中のアルコールは肝臓に運ばれて分解され、お酒を飲み過ぎると肝臓に負担がかかり、胃や腸にもダメージを与えることになります。加えてアルコールには小腸の蠕動運動を盛んにする働きがあり、内容物が小腸を通過する時間が短くなるため下痢に。長年飲酒している人は小腸の消化酵素の働きが低下し、慢性的に下痢しやすいです。
大きく分けて7種類に分類されるOTC胃腸薬ごとの特徴
健胃薬
胃の機能を調整する胃腸薬。生薬成分が中心で、その芳香や苦味などで唾液や胃液の分泌を促して、消化器全体の機能を整える作用があり、食欲不振や消化不良などにも効果がある。
塩化カルニチン(体内に存在する有機酸の一種。胃の運動を高める作用や、胃液の分泌促進、胃壁の血流増進作用などがある)、ウイキョウ(甘い香りが胃腸の機能を促進させ、消化を助ける)、オウレン(強い苦味が胃腸機能を高め、余分な熱を除去する作用がある)、ケイヒ(甘く刺激的な香りは胃腸機能を高め、体を温める作用がある)、ゲンチアナ(苦味成分が胃液や胆汁液の分泌を促進し、消化を助ける)、ショウキョウ(体を温め、新陳代謝を高める働きがある)、チョウジ(胃を温めて、停滞しているものを動かす作用がある)。
消化剤
主に唾液や胃液、腸液などに含まれる酵素と同じような成分。それぞれの消化酵素が分解できる食べ物の種類が違うため、一般的な胃薬には複数の消化剤が配合されており、食べたものによって消化剤の成分を使い分けると効果的。糖質の消化促進(ジアスターゼ・タカジアスターゼ)、タンパク質の消化促進(ブロザイム)、脂肪の消化促進(リパーゼ)、繊維質の消化促進(セルラーゼ)、胆汁の分泌促進(ウルソデオキシコール酸、胆汁末)。
漢方薬
ストレスや神経の使い過ぎで胃の調子悪くしたときなどに適した胃腸薬。自律神経の乱れ、夏バテなどで働きに支障をきたした胃腸を正常な状態に近づける。
・安中散製剤・・・体力中等度以下で、腹部は力がなくて、胃痛または腹痛があって、ときに胸やけや、げっぷ、胃もたれ、食欲不振、はきけ、嘔吐などを伴う次の諸症:神経性胃炎、慢性胃炎、胃腸虚弱
・半夏厚朴湯・・・体力中等度をめやすとして、のどのつかえ感や異物感があり、ストレスなどで胃の調子が悪い方に。
・半夏瀉心湯・・・体力中等度。みぞおちがつかえた感じ、ストレスなどで胃の調子が悪い人に。
総合胃腸薬
さまざまな症状に対応する胃腸薬。消化薬、制酸剤、健胃剤など複数の成分がバランスよく配合されており、適応する症状も胸やけ・むかつき・胃もたれ・痛み・消化不良と幅広いのが特徴。「胃の調子がなんとなくおかしい」など、特定の症状が明確にない場合の胃腸薬。幅広い分、効き目は浅くなるので、一番改善したい症状が絞り込めない場合や家庭の常備薬として提案する。
H2ブロッカー(ファモチジン)
胃酸の分泌を抑制、胃の痛み、胸やけ、もたれに効果的。胃酸分泌を促進するヒスタミンH2受容体の働きを抑えることで胃酸の分泌を抑制する働きがある。
胃粘膜保護、制酸剤(スクラルファート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム)
胃酸が過剰に分泌されると胃粘膜に炎症やただれが起きて、胃の痛みや胸やけなどを引き起こす。制酸剤で出過ぎた胃酸を中和、胃粘膜保護剤で荒れた胃の粘膜に直接働いて、荒れた胃の粘膜を保護し、修復を助ける。胃酸過多による胸やけや胃痛、吐き気、食欲不振などに効果がある。
鎮痛鎮痙剤(ブチルスコポラミン臭化物)
胃のけいれん、キリキリとした胃痛、差し込み痛(キューっと差し込むような痛み)、飲食後の急な胃痛がある場合に、胃痛の異常な緊張を和らげ、胃酸の分泌を抑え、痛みを鎮める。
社会人にとって新たな環境又は新たな環境などに慣れはじめると色々と忙しくなり始め、精神的なストレスが溜まりがちに。飲み会などの付き合いが増えたり、胃腸に負担がかかる時期が重なる時もあります。
胃腸のトラブルを起こす原因としては、「生活リズムが不規則になる」、「多忙や睡眠不足などによる過労」、「精神的なストレスがたまる」、「食べ過ぎ・飲みすぎの機会が増える」、「脂っぽい料理や塩分の多い料理を食べる機会が増え、栄養バランスが崩れる」、「ゆっくり食事をとる余裕がないので早食いになる」といったことがあげられるかと思います。そうした生活者の状況を勘案した上で、店頭でのアドバイスに備えればと思います。
(令和6年7月薬局新聞)
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