令和6年度第4回eラーニング 解答解説「口とノドの炎症や異常」
令和6年度第4回「口とノドの炎症や異常」正答と解説
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解答解説-口とノドの炎症や異常
問1.【受診勧奨】医療機関への受診が必要かどうかを振り分ける。
〔答:すべて ○ (すべて正答)〕
注意!:診断はできません。受診勧奨の際、思い当たる病名などを口に出さないように注意しましょう。
(1)①薬剤性口内炎のおそれ。原因の多くは医薬品と考えら、総合感冒薬のような一般用医薬品での報告もある。好発時期は、原因医薬品の服用後2週間以内が多いが、数日以内あるは1ヶ月以上のこともある。全身の粘膜にも粘膜疹が拡大したり、皮膚に水疱、表皮剥離・びらんなどの顕著な表皮の壊死性障害、高熱(38℃以上)がみられることがある。スティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死融解症、薬剤性過敏症症候群の一連の病態に急激に移行し、生命に係ることがある。
② 尋常性天疱瘡のおそれ。代表的な自己免疫性水疱症※1。初め口腔内に様々な大きさの破れやすい水疱が現れ、慢性的でしばしば疼痛を伴うびらんとなる。その後皮膚にも病変が出現。ニコルスキー現象※2がみられる。
※1:表皮や粘膜の成分を攻撃する抗体ができて細胞間接着機能が障害されて水疱が現れる病気。
※2:機械的刺激を加えると表皮の剥離や水ぶくれを生ずる現象。中毒性表皮壊死融解症でも見られる。
③ 進行した糖尿病のおそれ
④ 下咽頭がんのおそれ。喉頭や声帯に影響が及ぶとしわがれ声が続くようになる。しわがれ声を特徴とする喉頭がんと共に、喫煙や飲酒との因果関係が深い。
(2)① このような小潰瘍(アフタ)を多発するのは、ウイルス性口内炎であることが多い。発熱が目立たな2例を示すが、軽症なら受診は不要。特に単純疱疹は抗ウイルス薬による治療が可能なので受診勧奨とした。
・単純疱疹のうち、軽度の発熱に続く口腔前方の口内炎を特徴とするのは、単純ヘルペスウイルス1 型 (HHV-1)による。感染力は強いが、不顕性の場合が多い。小児が主だが、核家族化に伴い大人になって感染する場合も増えている。重症の場合、食事や会話が困難になることがある。感染後ウイルスは、頭部の三叉神経節に潜伏し、風邪やストレス、疲労などが誘因となって口唇ヘルペスとして再発する。最初、唇の一部分にピリピリ・チクチクを感じ、そこが半日しないうちに赤くはれ、小水疱の集簇になる。
・手足口病は、コクサッキーウイルスA16、エンテロウイルス71 等による。口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹が幼児を中心に夏季に流行。症状は軽く、特に治療しなくても自然治癒するが、学校の指導状況を確認。小児に流行しやすい夏風邪のヘルパンギーナも挙げられるが、比較的高い熱を伴う。
②白板症のおそれ。特に頬粘膜、舌、歯肉にみられる白い病変で、こすっても剥離しない。比較的頻度も高く、舌にできたものは代表的な前がん病変。びらんを伴う場合、ものが当たると痛かったり、食べ物がしみたりする。(舌にしこりを感じたら舌癌のおそれ)
③紅板症(紅色肥厚症)のおそれ。舌、歯肉、その他の口腔粘膜に発生し、境界は明瞭なものが多い。初発症状として刺激痛が出ることが多い。50 歳代以上の高齢者が全体の80%。50%前後が悪性化するといわれている。
④ ベーチェット病のおそれ。再発を繰り返す全身性炎症性疾患。口腔粘膜のアフタ性潰瘍(初発症状としてほぼ必発)、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼症状の4 つの症状を主症状とする。
⑤ シェーグレン症候群のおそれ。中年女性に好発する臓器特異的自己免疫疾患で、涙腺と唾液腺が異物とみなされて組織が破壊されてしまう。全身性の臓器病変を伴う場合もある。
⑥ 口腔扁平苔癬のおそれ。皮膚や粘膜にできる角化性で炎症を伴う難治性の病変。口腔では頬粘膜だけでなく舌や口唇にも生じる。白いレース状に粘膜が角化する。しばしば、びらんや潰瘍を形成し、接触痛を感じたり、食物がしみたりする。まれにがん化することもある。
⑦主にカンジダ・アルビカンスという真菌によっておこるカンジダ性口内炎のおそれ。病変が慢性に経過すると、白苔は剥離しにくく、上皮の肥厚を伴うようになり、白板症との区別は困難に。口角の発赤、びらん、亀裂を認める口角炎もカンジダが原因になっていることが多い。
問2.【一般用医薬品でも対応できる口内の症状】〔答: ①B,②A,③D,④F,⑤C,⑥E〕
問3.【口の炎症や異常に用いる医薬品の主作用の特徴】
(1)〔答: ①A,②B,③D,④E,⑤F〕
E:グリチルリチン酸二カリウムはうがい薬・トローチ・チュアブル錠に、グリチルレチン酸は塗り薬・貼付剤に配合
D:H28.3、医療用の回収を受け、一般用かぜ薬及び鎮咳去痰薬は新規製造を自粛、当該成分削除の承認を促進する通知が出ている。
(2)〔答: ①B,②C〕
(3)〔答: ①C,②D,③E,④B〕
A.口腔内の乾燥:滋陰降火湯の「のどにうるおいがなく…」、麦門冬湯の「咽頭の乾燥感があるもの」、柴胡桂枝乾姜湯の「口の乾きがある」は、水を飲むことを欲する意味を含まない。これに対して「のどの渇き」、「口渇」は、水を飲むことを欲する表現で、「のどの渇き」が挙げられている処方は白虎湯、白虎加桂枝湯、白虎加人参湯、「口渇」は柴葛解肌湯、竹葉石膏湯。“しばり”の中にあるのは地黄丸類、五苓散、茵蔯五苓散、柴苓湯、胃苓湯、四苓湯、越婢加朮湯、越婢加朮附湯、桂枝二越婢一湯、桂枝二越婢一湯加朮附、小青竜湯加杏仁石膏(小青竜湯合麻杏甘石湯)、小青竜湯加石膏、麻杏甘石湯※1、茵蔯蒿湯、清暑益気湯、銭氏白朮散。
その他の口腔内に対する効能・効果:「歯肉炎(排膿散、排膿散及湯、排膿湯)」、「歯周炎、舌の荒れや痛み(甘露飲)」、「舌炎(葛根黄連黄芩湯、梔子豉湯)」、「口臭(生姜瀉心湯、甘草瀉心湯)」及び「咽喉不快(響声破笛丸)」、「のどのつかえ感(半夏厚朴湯、茯苓飲合半夏厚朴湯)」並びにしばりに「咽喉・食道部に異物感(半夏厚朴湯、柴朴湯※2、茯苓飲合半夏厚朴湯)」、「舌に白苔がつき(小柴胡湯、柴陥湯、小柴胡湯加桔梗石膏)」等。
参考:基準外では、銀翹散、銀翹解毒丸等(かぜによるのどの痛み・口(のど)の渇き・せき・頭痛)がある。
※1:麻杏甘石湯は「ときにのどが渇くものの・・・」
※2:柴朴湯は、小柴胡と半夏厚朴湯の合方。
問4【患者情報確認・生活スタイル】〔答:①A,②B,③D,④F,⑤H,⑥E〕
①ショック(アナフィラキシー)を記載した製品もある。ヨウ素は甲状腺ホルモンの産生に影響を及ぼし、8~9割のヨウ素系製剤(ヨウ素、ヨウ化カリウムのみならずポビドンヨードも)で相談事項又は禁止事項に記載がある。
②ショック(アナフィラキシー)についてはCも同様。銀歯等の変色はヨウ素又はヨウ化カリウム製剤に自主記載製品あり。
③血栓は、フィブリンが網状になって血小板や血球をとらえて形成される。トラネキサム酸の抗プラスミン作用(フィブリンを溶解する酵素であるプラスミンの働きを阻止する作用)により、血栓を安定化するおそれがある。
④いずれの処方にも「食欲不振、胃部不快感」の副作用が記載されていて、駆風解毒湯(散)(多め、5~10g)は「胃腸が弱く下痢しやすい人」、白虎湯類(多い、15~16g)には「胃腸虚弱で冷え症の人」も相談するよう記載されている。その他、やはり清熱作用の強いG=黄連解毒湯にも同様に「体の虚弱な人」の記載がある。
問5【アドバイス】〔答:①○ ②○ ③× ④○ ⑤○〕
①参考:副作用として口内炎等が現れることが知られているその他の一般用医薬品成分の例。
一般用に記載なし:リゾチーム塩酸塩、ケトチフェンフマル酸塩、ファモチジン、ゲファルナート、γ-オリザノール、ニコチン等。
一般用に「口内炎様の症状」:動物静脈血管叢壁エキス (薬事日報社『一般用医薬品使用上の注意ハンドブック改訂版』より)
②“皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症”では粘膜異常のため。好中球減少を起こす“再生不良性貧血”及び“無顆粒球症”では感染により「のどの痛み」、血小板減少を起こす“再生不良性貧血”では「歯ぐきの出血」、“血小板減少症”では「歯ぐきからの出血」 が知られている。
参考:一般用の使用上の注意では、“再生不良性貧血”の症状説明に「のどの痛み」の記載はない。一般用で“皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症”の記載があるのはかぜ薬、解熱鎮痛薬、リゾチーム塩酸塩含有製剤、L-カルボシステイン含有製剤。“再生不良性貧血”と“無顆粒球症”両方の記載がある成分はdl-及びd-クロルフェニラミンマレイン酸塩並びにイブプロフェン、“再生不良性貧血”のみはアスピリン及びアスピリンアルミニウム、“血小板減少症”はH2ブロッカー及びメキタジン。アスピリン又はアスピリンアルミニウムの含有製剤では“その他”の部位にも「のどの痛み」の記載がある。
③栄養摂取の偏り、ストレスや睡眠不足、唾液分泌の低下、口腔内の不衛生などが要因と考えられている。
④溶連菌初感染時に生じる“抗原抗体複合物”が糸球体に詰まり、補体が活性化して急性糸球体腎炎になる。