乱用リスク対策と医薬品アクセスの両立を目指して
目次
薬物乱用防止における有資格者の役割と販売方法の有効性
薬物乱用防止において、薬剤師や登録販売者などの有資格者が販売可否を判断する仕組みが有効であることが、昭和大学薬学部の栗山琴音氏と同大学院薬学研究科の岸本桂子教授らの研究により明らかになりました。
この研究では、薬物乱用経験者の約7割(71.2%)が、有資格者の判断が乱用目的の大量・頻回購入の抑止につながると回答しています。
また、空箱陳列などの販売方法にも一定の抑止効果が認められています。
調査概要
研究チームは、過去5年以内に市販薬を使用した18~39歳の男女800人(乱用経験者400人、非乱用経験者400人)を対象にウェブアンケートを実施しました。その結果、乱用群313人、非乱用群400人から有効な回答を得ました。調査項目には、販売方法や陳列方法、有資格者の販売判断が購入行動に与える影響が含まれています。
主な結果
1.薬剤師や登録販売者による販売判断
- 乱用群の71.2%が、「大量・頻回購入の抑止につながる」と回答。
- 一方、非乱用群で「通常購入に支障を感じた」と答えた割合は42.0%にとどまりました。
2.陳列方法の評価
- 空箱陳列は乱用群の59.1%が「抑止効果がある」と回答し、非乱用群で「購入に支障がある」と感じたのは22.3%。
- 実製品の陳列については、乱用群の33.9%が抑止効果を認めた一方、非乱用群の22.0%が購入に支障を感じると答えました。
3.包装量の影響
- 小包装ほど抑止効果が高い結果が示されました。乱用群の抑止効果は以下の通りです:
- 「30日分」33.5%
- 「14日分」37.1%
- 「7日分」57.2%
- 「3日分」62.6%
- 非乱用群で「通常購入の支障になる」と回答した割合は次の通り:
- 「30日分」21.0%
- 「14日分」25.5%
- 「7日分」38.0%
- 「3日分」46.5%
4.初期乱用者への効果
- 乱用回数3回以下の初期乱用者では、小包装(「7日分」および「3日分」)が特に有効で、抑止効果が6割を超えました。
5.包装表示による注意喚起
- 「使用方法を守らないと副作用が起こりやすくなります」という表示に対し、乱用回数3回以下の59.8%が「抑止効果がある」と回答しました。
専門家の見解
岸本教授は、「薬剤師や登録販売者が販売可否を判断することで乱用防止に寄与する」と強調するとともに、現状では応対が十分でない点を指摘しました。また、規制だけでなく、有資格者が行うべき応対方法のさらなる検討が必要だと述べています。
今後の提言
- 陳列方法の改善
空箱対応は、通常購入への支障を最小限に抑えつつ抑止効果を発揮するため、望ましい方法と評価されています。 - 包装量の制限
成分ごとの中毒量を基にした具体的な制限を検討する必要があります。 - 包装表示の有効活用
注意喚起の外箱表示も乱用防止策として有効であり、さらなる調査と導入が期待されます。
今回の研究は、市販薬販売の現場での実践的な対応策を示す重要なデータを提供しました。
薬剤師や登録販売者が果たす役割を再評価し、乱用防止と一般消費者の利便性の両立を目指す施策が求められます。
専門家常駐を軸に進む薬機法改正論議
医薬品医療機器等法(薬機法)の改正に向けた議論が後半戦に突入しました。
厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会は、12月を目途に改正案の取りまとめを進めており、特に注目されているのが、乱用の恐れがある医薬品の販売方法をめぐる規制強化の方向性です。
規制案と業界の反応
厚生労働省が提案している規制案では、「乱用の恐れがある医薬品を購入者が直接手の届かない場所に陳列する」ことが推奨されています。
しかし、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)はこの案に対し、購入者のアクセスが大幅に制限されるとして反対意見を表明。
こうした声を受け、厚労省は「薬剤師や登録販売者を販売場所に常駐させ、専門家が販売可否を判断する」という代替案も含めて検討を進める方針を示しました。
販売体制見直しの課題
議論の中心となっているのは以下の点です:
1.医薬品陳列方法
- 陳列規制を店舗でどのように実現するか。
- 購入者の医薬品へのアクセスと乱用リスク最小化のバランスをどう取るか。
2.販売記録の保管義務化
- 販売履歴の記録や保管を求める規制案が検討されていますが、情報漏洩のリスクや他店舗やインターネットでの購入対策が課題です。
3.専門家常駐案
- 薬剤師や登録販売者が販売場所に常駐し、購入者の状況確認や販売可否判断を行う仕組みが適切か検討されています。
その他の議題
• 要指導医薬品の販売方法
オンライン販売の例外範囲や、一般用医薬品への移行条件の議論が進行中です。
• 調剤業務の一部委託
外部委託が薬局の対人業務を強化するか、責任の所在を含め慎重な検討が求められています。
• 製造管理者の要件見直し
薬剤師以外への拡大について、「原則薬剤師」とする一方で、特定条件下で非薬剤師を認める案が検討されています。
今後の見通し
厚労省は12月までに議論を取りまとめ、法改正案を提示する予定です。
薬剤師や登録販売者の常駐案が採用されれば、購入者の利便性を損なうことなく、乱用防止に向けた現実的な対応策として注目されるでしょう。
議論が複雑化する中で、店舗の実情や購入者の意見を考慮したバランスの取れた解決策が求められています。
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