【登録販売者 OTC医薬品の選び方】妊婦や授乳婦に販売できる花粉症の薬は?登録販売者としてどう対応するべきか?
目次
【OTC医薬品の選び方】妊婦や授乳婦に販売できる花粉症の薬は?
1.妊娠中・授乳中だけど花粉症がつらい!薬は飲んでいいの?
妊娠や授乳の時期と花粉症の季節がかぶってしまい、毎日のように鼻水やくしゃみ、鼻づまりなど不快な症状に悩まされている方は少なくありません。
とくに妊娠中は粘膜が充血しやすいため、鼻粘膜が腫れて鼻づまりが起こりやすいものです。
私も妊娠期間と花粉症の時期がかぶり、とてもツライ思いをしました。
非妊娠時と比べて明らかに鼻づまりの症状がひどく出たのです。
あまりに症状がツラく夜に何度も目が覚めてしまうため、ドラッグストアへ花粉症の薬を買いにいくことにしました。
しかし、案の定「かかりつけ医に相談するか、耳鼻科を受診してください」と言われる始末。
店舗の方針で妊婦や授乳婦が来たら受診を促すようにしていることもあるようですが、これでは今すぐ症状を改善したくて足を運んだ妊婦や授乳婦は救われません。
OTC医薬品でも妊婦や授乳婦が使える薬はいくつかあるので、状況に応じて紹介できるようにしておく必要があります。
もちろん使える薬の中にも使用に注意がいるものもあるので、薬の向き不向きも併せて知っておくことが大切です。
また一般に妊婦や授乳婦に病院で処方される薬と同じ成分のOTC医薬品であっても、注意書きに「妊娠中の服用は控えてください」と書かれているものがあります。このような注意書きがあるものは、いくら安全性が評価されている成分であっても残念ながら販売は推奨できないことも頭に入れておかないといけません。
2.妊婦や授乳婦にも販売できる花粉症のOTC医薬品
では妊婦や授乳婦が花粉症の薬を求めてドラッグストアに来た場合、どのようなOTC医薬品なら勧められるのでしょうか。
●レスタミンコーワ糖衣錠¹⁾【第2類医薬品】
主成分としてジフェンヒドラミン塩酸塩が配合された飲み薬です。ジフェンヒドラミンはオーストラリア医薬品評価委員会の評価でAとなっており、服用しても先天異常に影響しない²⁾ことが確認されているため、妊婦でも服用できます。
また国立成育医療研究センターが公開している「授乳中に安全に使用できると考えられる薬³⁾」にも記載があります。ただし添付文書上で「授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けてください」となっているため、授乳中の方に販売する場合は授乳を控えるよう伝えましょう。またジフェンヒドラミンは第1世代の抗ヒスタミン薬なので、眠気や便秘の副作用が出やすいことに注意しなければいけません。
妊娠中は大きくなった子宮で腸が圧迫されたり、黄体ホルモンの影響で腸の動きが鈍くなったりして、ただでさえ便秘しやすい状態です。
そのため便秘がちの方にはあまり向いていません。
●クラリチン®EX⁴⁾【第2類医薬品】
第2世代の抗ヒスタミン薬であるロラタジンを配合した飲み薬です。オーストラリア医薬品評価委員会の評価ではB1となっており、妊娠中に服用しても先天異常に影響がない²⁾ことが確認されています。
また、こちらも国立成育医療研究センターが公開している「授乳中に安全に使用できると考えられる薬³⁾」にも記載があります。ただしジフェンヒドラミンと同様に添付文書上では
「授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けてください」と書かれているため、授乳中の方へ販売する際は授乳を避けるよう伝える必要があります。
●アレグラ®FX⁵⁾【第2類医薬品】
第2世代の抗ヒスタミン薬であるフェキソフェナジンを配合した飲み薬です。
オーストラリア医薬品評価委員会の評価ではB2となっており妊娠中に服用しても先天異常に影響がない²⁾ことが確認されています。
便秘や眠気などの副作用と症状を抑える効果のバランスが取れているため、今回紹介したOTC医薬品の中でも勧めやすい薬と言えるでしょう。
国立成育医療研究センターが公開している「授乳中に安全に使用できると考えられる薬³⁾」にも記載があるため、授乳中の服用も可能です。
ただし、こちらも残念ながら添付文書上では「授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けてください」と記載があるため、授乳中の方へ販売する際は授乳を控えるよう伝えなければいけません。
3.妊婦や授乳婦に花粉症の薬を販売するときの注意ポイント
妊娠中の場合は、全身移行性の少ないステロイドの点鼻薬が治療によく使われています。
しかし市販で購入できるステロイドの点鼻薬は添付文書上で妊婦への使用が制限されているものばかりです。
あえて使用できるものを挙げるならばプレトニゾロンが配合された「コールタイジン点鼻薬a⁶⁾」があります。
しかし、こちらは血管収縮剤のテトラヒドロゾリンも含んでいるため、おなかが頻繁に張る方には推奨できません。
そのため点鼻薬を希望される妊婦が相談に来られたら場合は耳鼻科への受診を推奨するのがベターでしょう。
授乳婦の場合は、添付文書上での制限がゆるやかになるため、先程のコールタイジン点鼻薬aやベクロメタゾン配合したコンタック鼻炎スプレー⁷⁾などが販売の候補となります。
4.花粉症の薬を販売するときの伝え方のコツ
一般に妊婦や授乳婦の使用が安全とされている成分でも、OTC医薬品の場合は添付文書上で服用が制限されている場合が少なくありません。
安全が確認されているからといって添付文書上で服用が制限されている薬を販売してしまうと万が一副作用が出た時に医薬品副作用被害救済制度の対象外となってしまう可能性があります。
そのため治療にもっとも適していると考えられる薬でも販売できないことが多いものです。妊婦や授乳婦へ販売できる花粉症の薬はOTC医薬品でもありますが、治療できる範囲に限度があるので症状がツライ場合は耳鼻科にかかった方が適切な薬を処方してもらえることを伝えてあげましょう。
また市販薬だとどうしても「服用中は授乳を避ける」ように記載されている薬が多くあります。
とはいえ「授乳をさけて」と伝えるのは簡単でも、実際に授乳をやめるのは簡単なものではありません。
授乳婦のこを考えると、「授乳をさけてよりも「耳鼻科を受診してください」のほうが助かる場合があることも頭に入れておきましょう。
(大阪府医薬品登録販売者協会 会報60号)
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