【登録販売者のまめ知識】風邪薬の選び方:症状別アドバイスで顧客満足度アップ
新型コロナウイルスの流行時には、多くの人がマスク着用や手洗いを徹底したため、コロナ以外の感染症の発症が一時的に減少していました。
しかし、2023年5月に新型コロナの分類が5類に変更されたことで、国立感染症研究所のデータによれば、9月から12月にかけてインフルエンザの感染者数が大幅に増加しました。
さらに、昨年の秋から冬にかけてはプール熱(咽頭結膜炎)、今年の初めには伝染性紅斑(りんご病)、春から夏には手足口病やヘルパンギーナなどの流行も確認されています。
今後もインフルエンザや風邪の流行が予想される中、一般的な風邪にはOTC医薬品の風邪薬が活躍する場面が多くなるでしょう。
総合感冒薬と症状別製品の適切な選び方
総合感冒薬は、風邪の11症状(頭痛・発熱・のどの痛み・筋肉の痛み・関節の痛み・悪寒・くしゃみ・鼻水・鼻づまり・せき・たん)を緩和する薬で、メーカーからさまざまな種類が販売されています。「のどの風邪」「はなの風邪」「せきの風邪」といった症状別に特化した商品や、家族用として使いやすい常備薬まで、多様なラインナップが揃っています。
どの商品も効能効果の欄には「風邪の諸症状の緩和」と記載されていますが、成分の違いによって、それぞれの症状に特化した効果が期待できます。
たとえば、「頭痛・発熱・のどの痛み・筋肉の痛み・関節の痛み・悪寒」には消炎鎮痛解熱剤系、「くしゃみ・鼻水・鼻づまり」には鼻炎系、「せき・たん」には鎮咳去痰系の成分が多く含まれる薬が適しています。
また、生薬や漢方薬、ビタミン類といった+αの成分が配合された商品もあり、こうした違いが症状別製品として提案される理由です。
具体的には、発熱の緩和を重視するならアセトアミノフェンやイブプロフェン、喉の炎症にはトラネキサム酸を含む薬、鼻水やくしゃみにはクロルフェニラミン、せきがひどい場合にはコデインリン酸塩やジヒドロコデインリン酸塩を含む製品が効果的です。
常備薬を選ぶ際は、バランスよく成分が配合されているものがおすすめです。店舗で推奨する総合感冒薬がある場合は、その成分をNB(ナショナルブランド)製品と比較し、推奨品ならではの特徴を丁寧に説明することが重要です。さらに、NB商品と同じ内容であっても、低価格であればそれをアピールすることも効果的な接客につながります。
漢方薬を活用するための基本知識
漢方における「風邪」の考え方は、ウイルスや細菌などの邪気が風に乗って体外から侵入し、体表に付着することで悪寒、発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛などの体表症状を引き起こすというものです。
これが進行すると、のどの痛みやくしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状が現れ、やがて咳や痰、気管支炎、さらには胃腸障害や全身倦怠感など慢性的な症状へと進行する場合があります。
最終的には治癒するか、別の疾患に移行する可能性があります。
風邪時の漢方薬を選ぶ際には、患者の体質や症状を総合的に把握することが大切です。
虚証(やせ型)か実証(がっしりした体格)か、寒証(冷え性)か熱証(暑がり)かなど、「証」を正確に見極めて適切な薬を提案します。
- 葛根湯:体力中程度、悪寒と発熱があり、風邪の初期症状に適します。
- 麻黄湯:体力がある人向けで、悪寒、発熱、頭痛、関節痛が伴う場合に効果的です。
- 小青龍湯:水っぽい痰や鼻水が出る咳に使用します。
- 銀翹散:のどの痛み、頭痛、咳など風邪症状全般に。調剤薬としては入手が難しく、リピーターに人気があります。
- 甘草湯:のどの痛みや咳を和らげます。
- 麦門冬湯:痰が絡む咳やのどの違和感に適します。
- 五虎湯:顔を赤くし、咳き込む症状に使用します。
- 柴胡桂枝湯:風邪をひいて数日経っても悪寒や微熱が続く場合、関節痛や胃腸炎症状がある場合に効果があります。
- カッ香正気散:胃腸が弱く、冷房などで体調を崩しやすい人の夏風邪に。
- 竹茹温胆湯:風邪やインフルエンザの回復期に、咳や痰が続き安眠できない場合に使用します。
- 補中益気湯:体力が低下し、疲労倦怠や胃腸の働きが弱い人に適し、風邪の予防にも活用できます。
補中益気湯は特に風邪予防に効果的です。
胃腸の働きを高めることで気や血の生成を助け、健康を保つ力を強化します。
日頃から服用することで風邪を引きにくく、発症しても重症化しにくいとされています。
風邪症状に対する接客事例を活用して
今回は、当社店舗で実際にあった風邪症状に関する接客事例をもとに、具体的な対応について整理してみましょう。
たとえば、「熱はないけれど、のどが痛い。どの風邪薬を選べば良いですか?」という相談が多く寄せられます。
「のどが痛い=風邪」と考えるお客様も少なくありませんが、乾燥、エアコン、口呼吸、のどの酷使や刺激など、痛みの原因は多岐にわたります。
のどの痛み以外に症状が見られない場合、総合感冒薬よりも炎症を抑える効果のある製品を提案するのが適切です。
また、副作用(口渇や眠気など)を避けるため、不要な成分はできるだけ控えることが重要です。
具体的には、トラネキサム酸配合製品を中心に、トローチやのど飴、のどスプレー、アズレン配合のうがい薬などのアイテムを組み合わせて提案します。
特にのど飴は、生薬系スティックタイプやトラネキサム酸製剤、のどスプレーと一緒に購入されることが多いので、適切に案内することで販売機会を逃さないようにします。
一方、のどの痛みから始まり、その後に熱や風邪の症状が現れるケースもあります。
このような場合は、どの症状が一番つらいかを確認した上で、症状に合った総合感冒薬を提案します。
たとえば、「のどの痛みと鼻水があるが、夜も眠れないほどせきがつらい」というお客様には、「こちらの商品は、ジヒドロコデインとノスカピンがせき中枢に作用し、エフェドリンが気管支を拡張して呼吸を楽にします。
また、L-カルボシステインが痰を排出しやすくしてくれるので、つらいせきを効果的に抑えます」といった形で案内すると効果的です。
風邪薬は症状を一時的に和らげるものであり、根本的に治すものではありません。
疲労、ストレス、睡眠不足、栄養不足、冷えなどは免疫力を低下させ、回復を遅らせる原因となります。
症状を早く治すためには、バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動、入浴などを心がけ、「病気に負けない体づくり」を日々の生活で実践することが大切です。
もし日常生活だけでは体調管理が難しい場合には、栄養補給ができる製品として、糖分やビタミン、カルシウムを含むドリンクやゼリー飲料、また漢方薬の補中益気湯などを活用することもおすすめです。
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